初夏のすれ違い / カラダ編-13
「…おはよ」
「ん」
ん、って何よ!と心の中で突っ込みつつ、やはりこの環境が恥ずかしいのかな、と思う。
自分は女だからいいけれど、このカフェはオシャレな女性でいっぱいだ。
デートでもないのに高校生の男女が二人で向かい合っている不自然さ。
騒がしいから周囲に話が漏れないと思って選んだ店だが、これから話す内容を思って自分まで恥ずかしくなってきた。
慌ててメニューを開くが、朝食もまだなのに食欲が湧かない。
がっつり頼むサクに続いて、サンドイッチだけ注文した。
運ばれてくる間が気まずい。
バイクで来たの、なんて分かりきったことを聞くと、
「なんだ、また乗りてぇの?」
「う、うん、まぁ…」
「はは、ったく、この話にだけは素直だな」
「…うるさいなーもう」
やっと本来の掛け合いができた。
それからは部活の話をしながら食事をする。
とは言え…
「…食わねーの」
「だって…パンがパサパサする」
「ガキみてーなコト言うなよ、また痩せちまうぞ」
そう言われて亜紀子は二重に驚いた。
「それ、この間、結衣にも言われた。
…てゆーか、気付いてたんだ、痩せたこと」
「当ったり前ぇだろ、何年の付き合…腐れ縁だと思ってんだよ?
去年も同じクラスだったしな。
それに、気付いてたのは、伊藤や俺だけじゃねーし」
亜紀子の、…?という表情にサクは、つと口を閉じた。
鼻の下を伸ばした過去の三池から、慌てて話をそらす。
「つーかさ、なんでお前、そんなに痩せたの?」
「…それをこれから話すんじゃん。
あ〜あ、結衣はケーキおごってくれたのにな」
恨みがましい上目遣いに、サクはそれでも動揺して、メニューを開いて押し付けると店員を呼ぶ。
「ドリンクおごってやる。
飲み物があればノドも通るだろ」
「ご注文ですか?」
「…りんごジュース」
店員が去ると、サクはまた、ガキみてぇ、と言って笑った。
しかし、ちゃんと食えよ、と付け加えてきたので、さっきのは心配してくれたのだと気付く。
亜紀子は食べる一口ごとにジュースも口に含み、ゆっくり食べ終えた。
おとなしく待つサクに見られながら飲むジュースは、やけに甘酸っぱかった。
「…さて」
食器がさげられ、サクが座りなおす。
テーブルに肘をついてアゴを乗せた鋭い目付きのサクに覗きこまれると、りんごジュースは急に苦味を増した。