異界幻想ゼヴ・アファレヒト-1
二人は、睨み合っていた。
ルビー色の目はあくまでも険しく、それを見つめ返す黒目がちな目は眉間に皺を寄せている。
先に折れたのは、男だった。
大きくため息をつくと、決して彼には近づくまいと身を固くしている女の体をぐいっと引き寄せる。
「お互いとりたてて好意を抱いている訳じゃねえんだ。とっとと済ますぞ」
口調は乱暴だが、その扱いは優しい。
柔らかく華奢な肢体を傷つけないようベッドに倒し、服を脱がせ始めた。
「ふ……!う……!」
肌と服とがこすれる度に、女の唇からは吐息が漏れる。
「……その目は止めろ」
女の顔に、男は注意を向けた。
まだ幼さが残る、柔和な顔立ち。
しかしその目は、自分へ向けられた恨みで硬くなっている。
「……」
上半身を裸に剥くと、男は背中にキスした。
「……!」
びくっと、女の肩が震える。
「ったく……」
ため息混じりに、男は呟いた。
「この態度はねーだろ……」
ぺろり、と舌で背骨を舐め下りる。
「はっ……ぁう……!」
思いもかけないなまめかしい声が自分の唇から漏れたため、女は狼狽した。
「お前の平常時はどうなのか知らねぇが、搭乗後はかなり神経系が高ぶるからな。その分、感度は良くなる」
男はベッドと女との隙間に手を差し込み、体を抱き起こして自分に寄り掛からせる。
昨日のティトーの体は、一言で言うと細かった。
しかしこの男……ジュリアスの体は、硬い。
筋肉がぎっしり詰まった、戦うための体をしている。
自分の体に這っている手も荒事をくぐり抜けてきたために鍛えられ、節くれだった無骨なものだ。
なのにその動きは繊細を極め、自分はさっきから信じられたくらいになまめかしい声を上げては悩ましく膝を擦り合わせている。
「おい、深花……」
硬い態度と体の艶かしい反応とのギャップは愛撫している側にも理不尽に感じられたようで、乳房を揉みながら舌で耳をなぞっていたジュリアスはつい声をかけていた。
「……!」
ぶるぶるっ、と深花の全身に痙攣が走る。
いわゆる美声というものだろうか。
ジュリアスは、クリアで艶のあるいい声をしている。
そんな声を耳元で使われたら、狂乱状態にある深花は一たまりもない。
「はぁ、あ、あ……」
ぐったりと身を沈める深花の呼吸が落ち着くまで、しばしジュリアスは愛撫を止めた。
「落ち着いたな」
軽く耳の縁を噛んでから、ジュリアスは愛撫を続ける。
しこった乳首を刺激しながらうなじを唇で滑り降り、そのまま肩にキスを繰り返しながら指先はそっと下半身へ滑らせていった。
「ふっ……う、あ……!」
濡れそぼった秘部に指が触れた途端、深花の体は大きく跳ねる。
「……」
濡れ具合を確かめたジュリアスは、体勢を変える事にした。
ぽん、と深花の体を前に押し出す。
ベッドにつんのめる形になった深花は訳が分からず、立ち上がろうとした所でジュリアスに捕らえられる。
腹這いの姿勢から腰を持ち上げられ、排泄口をてっぺんに秘部をジュリアスの視界へ晒すようになったのだ。
「ひ……!」
あたふたと逃げ出しかけた深花の足の上に、ジュリアスの足が胡座をかく。
背後を取られてふくらはぎから下が制圧されてしまえば、体重差もあり深花に逃げる術はない。