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〈利益の卵〉
【鬼畜 官能小説】

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〈利益の卵〉-19

数日後。

土曜日の朝、突然、美優は母親に誘われて二人で出かける事になった。
こんな事は、今までは無かった事だけに、少し戸惑う美優が車の助手席に乗ると、父親と妹が見送りに玄関から出て来た。


『お姉ちゃんバイバ〜イ!』


いつものように能天気な妹の声に、美優は微笑んで手を振りかえした。
ゆっくりと発車する車を、妹と父親はいつまでも見て手を振っていた。


「ママ、今日はドコ行くの?」


怪訝そうな表情で、運転席の母親の横顔を美優は見つめた。
すると、にっこりと微笑みながら、母親は言葉を発した。


『美優をね、スカウトしたいって言ってくれた事務所があるの。CDも出してくれるって』

「!!!」


それは正に寝耳に水の出来事だった。
もう美優はアイドルなどなりたくなかったし、母親も同じ気持ちだとばかり思っていたのに……あの事件から一週間と経ってはいないのに、この母親の行動は、美優には理解出来なかった。


『美優を大事に育てたいって、先方が張り切ってるのよ』

「……そう…」


運転席と助手席、僅かしか離れていないのに、その温度差は相当な隔たりがあった。
美優を売り出したいと鼻息が荒い母親と、普通の少女でいたい娘……一方的な言葉の連続に、会話は繋がるはずもなく、時間だけが過ぎていく……

2時間程経過したろうか?ようやく賑やかな街に入り、焦げ茶色のビルディングが見えてきた。


『ここよ、このビルよ』


ビルディングの下に滑り込むようにスラントした坂を下ると、そこは駐車場だった。
そのビルディングの中に入る入り口に、スーツ姿の若い男が立っていた。


『ようこそ、お待ちしてました』


髪を短く整え、小綺麗な身なりの男は、名刺を母親に渡すと建物の中へと案内をしてくれた。

『佐藤美優ちゃんだね。写真集見たよ、可愛い娘だね』

「……ありがとうございます」


どうしても、美優の心から恐怖が消えない……あの事件以来、成人男性には恐怖心しか持てなかった。
有無を言わせぬ腕力・性欲の対象としか見ない下品な心・それが透けて見える淫らな瞳……一見真面目そうなこの男も、本性はイヤラしい気持ちで自分を見ているような、そんな嫌悪感に襲われている……だが、逃げたくても逃げるわけにはいかない……母親はこの男を信用しているようだし、男も、変なそぶりをするわけでもない。

案内されるがままに部屋へと連れられ、ドアは閉められた。

その部屋は、教室程の広さで、壁も天井も白一色の綺麗な部屋だ。
窓の外には綺麗に苅られた生け垣が見え、走る車の群れがチラリと見えた。
開放的で清潔な部屋は、前の事務所のスタジオとは雲泥の差だ。




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