ブランチを、御一緒に。-5
「…で、昨日サクと話し合って、もう付き合ってることにしちゃおっか、ってなったワケ」
「…はい、片桐先生」
「なんでしょう、伊藤さん?」
「脅されて、サクに酷いコトされてないですか!
なんで火曜日からサクを無視したんですか!
結局のところ…亜紀子の好きな人は、誰なんですか!」
「ま、また質問責めだなぁ、結衣ったら。
サクには、まだそれほど酷いことはされてない、と思う…よ」
「それならいいけど。
でも分かる、だんだん普通ってなんなのか、あやふやになるよね」
「…今度、結衣の話も聞くからね!」
あたしは、慌てて苦笑でごまかす。
「あはは、ま、それは置いといて。
で、なんでバスケ部の応援に行く話から、サクを無視することに繋がるの?
サクに、なんか言われた?」
「…好きでもないヤツに騒がれても邪魔だ、って」
「…てことは、そう言われてスネてるの、亜紀子?」
「違うよぉ、結衣!
あたしがサクをどう思ってるか、じゃなくてね、
サクが、その…脅してまであたしとシたいのは、あたしのこと好きだからかと思ってたのね、
それならまだ許せるかなぁって…
だからその…違うって、好きじゃないって言われて、すごくムカツいたの!」
…そのムカツくっていうのが、スネてるって状態じゃないのかなぁ。
でもきっと亜紀子は、サクに好かれてるかもって思うことで、今まで心のバランスを取っていたのかもしれないね…。
春休み中に"ちょっと色々"あった上に、新学期にレイプまがいのことされちゃね。
「ねぇ、やっぱり誰かに相談したら?」
「…いいの。
お兄ちゃんとの秘密だけじゃなくて、サクは今じゃあたしの画像とかも持ってるし、手を出せないよ。
それに…昔から知ってる相手だもん」
「亜紀子…
ホントに今まで、よく一人で耐えてたね!
辛かったでしょ、えらいえらい」
手を伸ばして亜紀子の頭を撫でると、亜紀子は情けない顔してふにゃっと笑い、そのまましばらく泣いていた。