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百獣の女王
【ファンタジー 恋愛小説】

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百獣の女王 U-1

俺は公園のベンチに座っている。

隣には金色の髪の女性が座っている。

そして彼女の隣には黒いライオンが寝そべっている。

一体、どうすればいいんだろう?

俺は今自分が置かれている状況に、何とも言えない緊張感を抱いていた。だから隣に座っている彼女に話しかけるどころか、その姿すら横目に見ることができないでいる。



貴方がとても綺麗だったから



彼女が黒いライオンになった黒猫と一緒に現れて、俺のことを綺麗だと言った。

その後、「隣に座ってもいいですか?」と聞かれて、俺は「あ、どうぞ」と反射的に答えて、彼女が俺の隣に座って、それで・・・・・・。

何も起こらない今の状況が延々と続いている。

正直言って参っていた。

俺の隣には途轍もなく綺麗な女性が居て、黒猫がライオンになって、そのライオンが近くで寝そべっていて、そして何よりも、



貴方がとても綺麗だったから



彼女が俺に言ったこの言葉が何度も頭の中で浮き沈みしていた。

どうして俺にそう言ったのか分からない。くたびれた作業着を着た俺に綺麗なところなど何処にある?

気になってはいたが、今のこの何とも言えない雰囲気を打ち破るほどの好奇心にはならなかった。



「貴方の・・・・・・、」



彼女が突然口を開いて、俺は本当に驚いた。だから俺はつい反射的に「え、は、はい?!」と声にもならない声を上げてしまった。

ヤバイ、完全に裏声だった。

冷や汗をかいた俺は、取り繕うように「き、聞きたいことがあったら何でも言って下さい!」と一気に喋った。

口に出してしまってから、あちゃーと頭を抱えたくなったが、同時に肩の荷が下りたような気分にもなった。

また裏声になっていたのは置いておいて、取りあえずこの雰囲気を崩す切っ掛けを作ることはできたのだ。

これで彼女が何か俺に聞いてくれれば・・・・・・そう思ったところで自分が情けなくなった。

今思い返してみれば、最初に話しかけてくれたのは彼女の方だった。切っ掛けを作ったのは彼女であり、俺は反射的に声を上げてしまって、彼女の言葉を止めてしまった・・・・・・ことになるのか?

「貴方の、」

自己嫌悪に陥りかけていた俺に、彼女がもう一度話しかけてくれた。


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