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アンハッピーバースデー
【その他 推理小説】

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アンハッピーバースデー-1

昼休みの学食は人でごった返す。食べる席を確保するのも困難だ。
当然、出遅れれば、トレーをもって途方にくれることだってある。
だから、俺は知り合いでもいやしないかとうろちょろしていた。
半ばあきらめかけたところで声がかかった。
「朱園じゃねぇか。どうした、場所探しか?」

真壁雅雄が口からごはんつぶを吹き飛ばしながら笑った。
髪をセットするなんてことがなく、坊主にしたらしばらくは伸ばしっぱなしの連環で、今は荒れ放題に伸びている。
髭も伸びているが、濃くはないため、まばらな無精髭といったところか。
がさつな人間性の現れた食べかたに、俺は苦笑を浮かべた。
「うわっ、きったなぁ!ごはんつぶラーメンに入るとこやったで!」

真壁に対して真っ向からツッコミを入れるのは、多分もうこの冴沢猛くらいだろう。
細身でひ弱そうな外見なのだが、空手をやってるくらいなので真逆だ。ただ、喧嘩したとこは見たことがない。
関西出身で、興奮すると関西弁が見えかくれするが、普段は標準語に染まっている。
関西人としての性なのか、例え相手に効いていなくとも、ツッコミは入れなけば気が済まないらしい。
「まぁ、でも、そのくらい予想つくわよね」
「って、一人だけ避難させとる!」

白浜さゆりは、真壁の射程から避難させていたトレーをテーブルに戻すと、クールに言い放った。
通称「冷徹の美少女」。
まぁ、きっつい言葉で核をつくお人。
美少女と付けられるだけあって、ビスクドールを連想させる顔立ちはきれいではあるが、精神が崩壊の危機にさらされるくらいの覚悟がなけりゃ付き合うなんて考えないほうがいい。
「こいつの性格考えたら、京司を見たら声をかけずにはいられないでしょ」
「それはそうかもしれんどね。って、なんで後ろから来た京司に気がついてんの!」

真壁は、俺が来るほうに向かって座っていたが、真壁に向かい合っていた猛とさゆりには俺が近づいて来るのは見えなかったはずだ。
「足音」
さゆりの一言に空気が凍りつく。
「そんなことでわかるんで?」
おそるおそるといった感じで猛が聞いた。
「そうよ。足音からは色々なことがわかるわ。身長や体重などのほか、癖から性格も想像できるの。あなたたちの癖ならよくわかってるし」
うふふふ、と笑みを付け加えるのを忘れない。
どうだい?いくらきれいだからって付き合いたいなんて思わないだろ。
「嘘よ。こいつの反応でわかったの」
それを聞いて胸をなで下ろす。
「おまえ、リアクション大きすぎんねん」
「がはははは、そんなことだろうと思ってた」
二人は納得したみたいだが、俺はいまいち釈然としない。
真壁の反応とは、すなわち俺に声をかけることのはず。
だとすると、やはりその前に知っていたのでは。
さゆりは俺の視線に気がつき、
「座れば?」
と自分の横に座るように促す。
テーブルを囲むにはバランスが悪いように思うかもしれないが、真壁の横にもう一人いるせいなのだ。


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