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アンハッピーバースデー
【その他 推理小説】

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アンハッピーバースデー-2

「はぁぁぁぁぁぁ」
島野徹は、俺が席に座るのを合図にしたように、長いため息をついた。
いまにも、口からエクトプラズムでも吐き出しそうな悲壮感を漂わせている。
普段なら猛の相方を務めているはずなのに。
いつもよく一緒にいるのがこのメンバーなのだ。
同じ講義ばかりとっているわけではないから、今日みたいにはぐれることもある。
「今日はずっとこんなだ」
猛はつまらなそうに言った。
「こういう日があってもいいんじゃないか」
真壁は気にならないのか、カツ丼をかき込んでいる。
「少しは気にかけてやれよ」
「確かに気になるわね。でも、聞いても教えてくれないもの」
猛とは違った意味でつまらなそうにさゆりは言う。
「そうそう、教えてくれんからな」
「黙って食ってろ」
真壁は頼りになりそうもないから蚊帳の外にいてほしい。
「徹。何があったか知らないが、あまり落ち込むなよ」
声をかけるだけのつもりだった。
なにしろ高校は引きこもりの末に中退してるくらいで、自分の望まない人間関係などまっぴらなんだ。
あまり深い付き合いになるのも面倒なので避けたいくらいだ。
「えらいことになってんだよ、京司。どうすればいいんだろうね、どうすれば。あはははははははた」
力ない笑いで、ついに壊れたかと思ってしまった。
「そうね。京司なら、いいアドバイスしてくれるかもね」
「そうとも、京司だったらなんとかしてくれる」
「まぁ、よくはわからんが、俺より頼りになるな」
勝手なこと言って人を巻き込ませようとしてくれる。
さゆりは自分が聞きたいだけだろうし、猛は相方を俺にまかせて逃げたいだけだし、真壁に関しちゃなんも考えてない。
俺は、面倒なことは嫌いなんだ。
「まぁ、なんだ、俺でよけりゃ相談にのるぞ」
なのに、突き放すことができるほど非情にはなれないんだよな。
「あのな。俺がアプローチかけてる女いるじゃん」
「うるさく言ってるから名前も覚えたよ。金井美佳だったな」
確か、ちびの徹には不つりあいな長身の美人。モデルがバイトって話だ。
「そうそう、それがある条件クリアできたら付き合ってくれるって言うんだよ」
全然いい話だ。
「条件が厳しいのか?」
「厳しいなんてもんじゃない。誕生日を当ててみろって言うんだ」
「なんのヒントもなしにか?」
ただ当てろだけじゃあ確率が低すぎる。
「あるにはあるんだ。でも、こんなんじゃわかりっこない」
徹は頭を抱え込んだ。
「言ってみたら、あなたの頭じゃ理解不能でも、私たちならわかるかもしれないわ」
「どっちにしても双子座の日」
徹はぼそりとつぶやくように言った。
「それだけで、誕生日にはプレゼントよろしくね、だぜ。どうしろっての」
「正解発表は?」
「誕生日の翌日に教えてくれるって」
俺はなんとなく日付がわかったが、あまり言いたくなくなった。
「それって、相談するならさゆりの方がいいんじゃないか?」
俺は押しつけるように横にパスした。
「そうね。どちらかというと、黒魔術の方が好きだけど」
空気が冷える。五月だけど暖房プリーズ。
「双子座ならもうすぐね。でも、どういう意味かしら?」
「どう転んでも双子座ってことと違うか?」
猛が口を挟む。
「でも、それならいくつも該当しそうね」
「そしたらど真ん中ってのは?」
「それなら一日だけになるわね」
「それが正解!?」
徹の顔がほころぶ。


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