盛春の一週間-12
そんな感情があるせいで、今日のバスケは荒れた。
しかも、三池は部活前にイヤミを言ってきた。
「サクぅ、無愛想な顔してないでよねぇ。
明日はせっかく女子が来てくれるんだからさぁ」
「…ふん」
…知るか。
お前が来てほしいのは片桐だけだろ。
俺が無視したせいで、三池も荒れた。
カリカリした雰囲気は、チームに伝染する。
こんなんじゃ良くない、と思いつつも、ファウルを止められない。
…―ピ、ピーッ!
「何やってんだ、三池!
今わざと転んだろ?」
…だよ、な。
俺も悪かったけど、そこまでの手応えは無かったから、コーチの言葉に安心する。
「や、違いますよぅ、今のはサクが…!」
…ちっ。
うるさいな、黙っとこ。
「……」
「ちょ、サクっ…!
てめ、この…!」
「こら、ストップー!
なんだお前ら。
仕方無いな、今日はもう解散だ!
こんな雰囲気でやってても意味が無い」
「えぇーっ、コーチ、明日試合ですよ?
サク、お前もなんとか言えよぅ!」
「…すんませんでした。
俺は…帰ります」
「うん、そうした方がいい。
皆、明日は市民体育館に、9時集合な!
…じゃ、解散!」
三池のようにブー垂れる者、さすがに反省する者、早く帰れることに顔が晴れる者、様々だ。
他がまだ部活中なので、いつもより空いている更衣室。
さっさと着替えて帰ろう。
学校の正門を出ると、後ろの方で三池がまだ文句たれていた。
「あ〜あ〜、こんなんで、明日勝てんのかよぅ」
ところがいきなり、ぱっとその声が明るくなった。
「あっれ〜、片桐ちゃん、今帰り?
一人?一緒に帰ろうぜぃ!」
…なんだと!?
片桐のヤツ、なに捕まってんだよ!
でも俺は…振り向けない。
「こんな時間まで何してたのぅ?
え?図書室?
あーもしかしてぇ、明日のお弁当のためでしょ〜?」
すぃっ、と俺の横をツバメが弾丸のように追い越して行った。
片桐の声は、ちっとも聞こえてこない。
三池とくっつくつもりか?
冗談じゃねぇ、片桐は俺のモンだ。
なんかカレシのようなセリフだが…独り占めしたいだけなんだろうな、俺は。
ただ、あのカラダを手放すつもりが無いだけだ、それだけ…。