百獣の女王 T-5
2次会がお開きになって、それぞれが帰路についていた。
「ふあぁ」
綾菜が大きな欠伸をしている。電車の中に居るのは俺達だけだ。
「寝たらどうだ。俺、起きてるから」
今にも舟を漕ぎ出しそうな綾菜に言うと、「うん」と綾菜は素直に俺の肩に頭を乗せた。
「・・・・・・」
相変わらず寝付きのよろしいことで。
む。
さっきから綾菜の髪の毛が首をくすぐってくる。
何とかしたかったが、コイツはちょっと触るだけで直ぐに起きてしまう質だった。
我慢するしかない。
キイイーーー!
電車がカーブを曲がった。
衝撃で綾菜の頭が肩からずれ落ちて、俺の膝の上にストンと収まった。
目が覚める気配はなかった。俺は綾菜の横顔を見て、「ぷ」と噴き出した。
丁寧に整えた髪の毛が少し乱れて、その内のひと房が鼻の穴に突っ込んでいた。
へっぷし!
髪の毛に鼻をくすぐられたのか、綾菜が可愛らしいクシャミをした。
「ふふふ」
大変面白い。
俺は飽きずに綾菜の横顔を眺めていた。
「・・・・・・」
こうやってまた俺は馬鹿になってくんだろうな。