百獣の女王 T-16
「この子の目を通して、貴方をずっと見ていた」
「え?」
彼女の真っ白な手が黒いライオンの鬣を梳いていた。
巨大なライオンが横に並ぶと良く分かる。彼女はとても背が高かった。
黒いライオンを、まるで子猫のように扱う金色の女性。
「貴方をずっと見ていた」
ライオンに向けられたいた彼女の金色の瞳が、俺の目を捉えた。
「貴方がとても綺麗だったから」
その言葉が彼女の瞳のように、真っ直ぐに俺を貫いた。
ふいに、強い風が吹いた。
彼女の黄金の髪が吹き荒れた風に攫われて大きく広がっていく。
夜風に靡いて踊る彼女の絹のように細くて長い髪。
・・・・・・それはまるで黄金の鬣のようだった。
俺は夢を見続けている。
ずっと1匹のネコを追い続ける夢。
決して手が届かないことに歯噛みして。
捕まえても直ぐにすり抜けてしまうことに苛立って。
誰かの手の中で愛らしく鳴いている姿に涙が出て。
本当に気紛れを起こした時にしか振り返ってくれない。
でもどうしようもなく好きで諦められなくて。
いつまでも、いつまでも同じ夢を見続けている。
そんな俺の夢を引き裂くように現れたのは、太陽のような鬣を持った百獣の女王だった。