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マネージメント
【アイドル/芸能人 官能小説】

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4・揺らぎとキスと甘えん坊-2

「・・・・・・」
「あ、もう出来たの?」

雅は黙って私に見せてきた。
でも、画像も文字も画面に表示されていない。

「書いてないじゃない、何で見せるのよ」
「まりなが書けって。俺、こういうの本当は苦手なんだ」
「ちょっと、ふざけないで。締め切りまでもうすぐなのよ」
「そんな事言われたってもう思い付かない。だから、何かいいアイデアくれ」
「ちゃんと自分で考えなさい。甘えたら駄目」
「さっきのでいいじゃねえか、誉めてくれただろ」
「じゃあ思い切って、買わない奴は日本から出ていけ、って中指立てた画像載せれば。雅だったらそうしても大丈夫だよ」

・・・あれ?雅が笑わない。
それどころか何よ、その失笑みたいな冷たい瞳は。

「なら舌も出してみたら。なめんじゃねえぞって。そうだ、絶対特効服似合うよ!この機会に着てみたら?」

焦って思わず悪乗りしてしまったけど、雅は笑っている。
こういう滑った時はあまりやらない方がいいんだけど、上手く挽回出来て良かった・・・

でも、私はまだ雅への接し方がよく分からない。
今みたいに失笑されたりしたら、直ぐに冷静では無くなってしまうのだ。
或いは雅が返事に詰まって微妙な空気が流れるか、馬鹿にされるか、いずれにしてもろくな結果にはならない。

マネージャーとしてまだまだ至らない部分があるのが悔しい。


(気にしすぎなくていいんだぜ。どんな親しい間柄だって、何もかも知ってる訳じゃない。だから、気張らずいけよ、な?)


ふと、私の脳裏に歯の出た詐欺師顔のあの人の言葉が過る。
いつも適当にあしらって話を聞き流しているのに、何故か私の心に引っ掛かったままずっと残っていた。

いけない、自分で認めちゃ駄目なんだ。
なかなか上手くいかないからって諦めたら何も変わらない。
いつか雅と本当の意味で心を通わせられる時が来るはずだ。

出来る、出来ないを迷ったりするより先ず信じてしまう。
誰も絶対の正解を教えてくれない、いや知らないんだ。
自分を信じた人は、今の場所にしっかり足を踏みしめて立つ事が出来る−


そして、発売日を迎えた。
今日は握手会という一大イベントがあるから気合いを入れなくちゃならない。

今までやってきた宣伝活動も当然大事だ。
でも、こうして直接雅の為にファンが集まってくれる機会というのは、特に疎かには出来ない。


「ありがとうございます!へへっ」

最初に手を握られたファンの女の子が喜んでいた。
そして、生で聞いちゃったと呟いたのを私は聞き逃さなかった。
どういう訳か知らないけど、雅の笑い方が好きなファンは多いらしい。
公式のサイトではそれなりの頻度でそういう書き込みを見掛ける。

「ありがとうございます!」


次のファンは両手でしっかり握り締めて、その次の人には顔を近付けたりする。
その勢いに圧倒されながらも、女の子は嬉しそうだ。
こういう地道な、でも着実な活動が雅子の行く先を作っていく。


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