それは小説を投稿した事から始まった.....-3
「.....ハイ.....」
彼女は複雑そうな顔をしていた。
「ミスをしない事は大事な事だけど....ミスを犯した時どうカバー出来るか?その事が大切だと俺は思っている。」
彼女は俺の顔をジッと見ていた。
「今はまだ無理かもしれないけど、横山さんが誰かのミスをカバーしなくてはならない時が必ず来るから....その時は宜しくね。」
俺はわざと明るく言った。彼女は、
「....本当に来るのかな....」
不安そうに言った。
「必ず来るよ。だから、例えミスをしても、消極的にならずに、積極的にいこうね。」
彼女は黙って頷いた。
「アッ、でも、あまりミスを重ねられても困るんだけどね。」
俺がそう言うと、彼女は安心したように笑った。
「その笑顔を忘れないでね。」
「ハイッ」
その時彼女が見せてくれた笑顔、その笑顔に俺はやられてしまった。その笑顔を守りたいと心から思ったのだった。
「夢か.....」
時計を見ると、9時過ぎだった。
「いつもなら、まだ仕事の途中だな....」
すると頭の中で、昼の光景が浮かんで来た。彼女が走り去って行く光景が....彼女は何も言わないで走り去って行った。例えば、好きな人がいるから....とか、付き合っている人がいるから....とか言ってくれたなら、その人と幸せになって....と声を掛ける事も出来た。しかし逃げるように、走り去られると何も言えない....拒否された....彼女に....俺の思いは....もしも、彼女の事を好きでいる事さえも拒否されたら....俺は....俺は....どうしたら......どうしたらいい?....どうしたらいいのだろうか.....その答えは見つからなかった。
いつの間に眠っていたのか、気付くと昼を過ぎていた。起きあがるのも面倒で、ずっと寝ていた。携帯の呼び出し音に気付き、見ると知らないナンバーが表示されていた。いつもなら無視するのだけど、何故か今日に限って電話にでた。
「ハイ....」
「..........」
「......どちら様ですか?.....」
「........横山.....です.....」
彼女の声がした。
「えっ、どうして?」
「美香さんに聞きました....」
何故彼女が....その思いが頭から離れなかった。
「昨日は、すみませんでした。」
「えっ?」
「何も言わないで帰ってしまって....ゴメンなさい。」
「わざわざその事を?」
「ハイ....」
やはり彼女を好きになって良かった。心からそう思った。そして、俺の気持ちを改めて告白しよう。そう思った。
「横山さん....聞いて欲しい事がある....」
「....ハイ....」
俺は深呼吸をして、
「横山さん....俺は貴女の事が.....貴女の事が好きです....貴女が.....貴女が俺の事をどう思っていても....俺は....貴女が好きです....」
「................」
彼女は何も言わないで聞いていてくれた。
「俺は貴女の事....好きでいてもいいですか?....もしも.....もしもそれが....それが迷惑なら正直に言って下さい....貴女が迷惑だと言うなら....貴女の事を忘れます....いえ忘れられるように努力します....時間がかかると思うけど....」
「...............」
彼女の返事は無かった......
「.....横山さん....」
「......ハイ.....」
「俺は貴女の事が好きです.....」
「貴女の事好きでいてもいいですか?.....」
数日前まで、まさか彼女に告白出来るなんて考えられなかった.....今でも信じられない.....どこにこんな勇気があったのか.....
多分それは彼女がくれた勇気......
小説を投稿した事で得た勇気.....
それは小説を投稿した事から始まった........
......あるひとつの物語....