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ストーカーは誰?
【ホラー 官能小説】

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田辺誠の日記V/最後のカルテ-2

「そうよ…」
微かな緊張が走ります。
彼女の両手がヌイグルミを掴みました。
ホッと一息をつく私の手からゆっくりとヌイグルミが離れて行きます。
両手でヌイグルミを抱えた彼女。
ジッとそのヌイグルミを見つめている様です。
伏せた顔、バサッと垂れ落ちた前髪の為にその表情が見えないのは残念ですが仕方ありません。
「可愛いでしょ?」
ただ彼女が手にした事に僅かな安心を覚えた私。
ニッコリと彼女に話しかけました。
次の瞬間。
彼女が顔を上げました。
「……!!」
前髪の隙間から覗く彼女の瞳。
ゾッとする様な冷たさです。
そして…。
彼女がヌイグルミを引き裂き始めました。
「な!なにしするの!」
思わず声を荒げてしまった私。
でもこれは大きなミスでした。
彼女は金切り声を上げながら狂った様にヌイグルミを引きちぎり続けます。
「落ち着きなさい!」
私の未熟さでしょか…イケないと思っても。
私も自分の声を鎮める事が出来ませんでした。

白衣の男性が二名。
私と彼女だけ、他に何もない部屋に飛び込んできました。
その男性二人が。
無言で私を押さえつけてきました。
「は…放しなさい!」
藻掻き…暴れる私。
でも男性二人は私をガッチリと押さえ。
椅子から引きずり立たせました。
「放してぇ!」
振り回そうとする両腕はギリギリと締めつけられ。
逃れようとする胴はしっかりと押さえつけられています。
「何すんのよ!」
私は身の危険すら感じて必死の形相で。
押さえつけてくる男性二人を睨みましたが。
男性二人は表情を変える事もなく。
冷たい視線で私を見据えています。
「やめ…て!」
頭を激しく振った時です。
私の目の前には一枚の鏡が…。
その鏡の中には白く前かけの様な簡素な服を着て、顔を覆う程の長髪を振り乱した女らしき者。
そして、その女らしき者を押さえつける二人の白衣の男性が映っていました。


その鏡の向こう側。
白衣を着た初老の男と若い男が二人。
マジックミラーとなった鏡越しに部屋の中の様子を見ていた。

「彼は?」
若い男は眉間にシワを寄せながら部屋の中の様子に見入っていた。

「彼は高校生の時に自分の担任だった女教師を殺害したんだ」
初老の男が静かに答えた。

「なんでまた?」
痛々しげに眉を潜める若い男。

「ストーカーをして…その女教師の家に忍びこんだ」
鏡の向こうの光景から目を放さずに淡々と答える初老の男。

「その時に精神に異常を?」
鏡の向こうの風景から、初老の男の横顔へと視線を移す若い男。

「どうかなぁ実在しもしない男子生徒を作り上げて…その女教師にストーカーされてるって相談していたみたいだからねぇ」

「男子?」
若い男が眉を潜めた。


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