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ストーカーは誰?
【ホラー 官能小説】

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田辺誠の日記V/最後のカルテ-1

田辺誠の日記V

×月?日
あれから何日経ったか…判らない。
僕は昼夜に問わず。
あの人を愛し続けた。
それでもあの人は僕に心を開いてくれようとはしなかった。
それでも僕はあの人を愛し続けた。
そしてあの人はいつの間にか動かなくなっていた。


最後のカルテ

私はある病院で心療内科に携わっています。

「さぁ…リラックスして下さい」
私は目の前に座る女性に優しく語りかけました。
彼女は俯いたまま…自分を抱くようにして小刻みに震えています。
「少しお話しましょうか?」
私の彼女の瞳を覗き込みました。
しかし…彼女は私の視線から逃れる様に。
身動ぎを繰り返すだけで私と目を合わせ様としません。
「大丈夫よ…私は味方だから…」
私は彼女の手に自分の手を重ねようとしましたが…。
私の指先が彼女は手に触れた瞬間。
彼女は怯えた様に自分の手を引っ込めました。
「あ…ごめんなさい」
私は微笑みを湛えたまま自分の手を戻します。
そして。
「昨日の夜はよく眠れた?」
震え続ける彼女に優しく語りかけ続けます。
しかし彼女は乱れた前髪の隙間から私を盗み見る様にしているだけです。
でも此方を見る様になっただけでも大きな進歩です。
「朝はどう?何か食べれた?」
だから私は他愛ない話を続けます。
彼女の様なケースは焦りを禁物です。
時間をかけて心の襞を解きほぐして行くしかありません。
「今日はあなたにプレゼントを持ってきたの」
私は持ち込んだトートバックに手をかけました。
彼女がビクッと身を引き。
自分の身体を抱く様にした震えを強い物に変えました。
「大丈夫よ…何もしないから」
私は彼女の様子から目を離す事なくトートバックの中に手を入れました。
彼女の様に過剰に自己防衛している患者は。
追い詰められたと感じた時に此方に攻撃を仕掛けてくる事も稀にあります。
気を抜く事は出来ませんでした。
特に此方が何らかの動きを見せる時は要注意です。
だから…。
「大丈夫だかねぇ…」
私は彼女を落ち着かせる様に優しく語りかけながらトートバックから手を出しました。
その手には仔犬のヌイグルミが握られています。
彼女の様な場合、幼児退行も考えられるので。
子供をあやす様に接するのも重要なポイントです。
「ほら…可愛いでしょ?」
私はゆっくり時間をかけてヌイグルミを彼女の方に差し出しました。
彼女の視線がヌイグルミの方に流れました。
興味を示している様です。
「さあ…どうぞ、あなたにあげるわ」
私はヌイグルミを小さく震わせながら彼女の手元に近づけました。
彼女の手が僅かに動きました。
「手に取ってごらんなさい」
何か興味を持つ事は更なる大きな一歩です。
私は固唾を飲んで成り行きを見守りました。
そして彼女の手が…。
震える彼女の手が躊躇いがちにヌイグルミに伸びてきました。


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