1・真面目とエッチと寂しがり屋-7
「・・・・・・」
エレベーターを降りて、車に乗っても、私の肌に残る雅の熱は冷めなかった。
でも、心地好さは感じない。
肌にべっとりまとわりつく湿気みたいな、気持ち悪さに似た嫌悪感があった。
夏の訪れの前に感じる湿気の様な、汗ばむあの感覚だ。
事務所に着く迄の間、私は雅の唄を聴いていた。
夏蒸雅(なつむすみやび)ではなく、アーティスト¨MiYaBi¨としての曲だ。
雅の性格や立ち振舞いはさておき、歌声は好きだった。
まだデビューして二年目の新人ながら実力はあり、今までに5曲をリリースしていずれもそれなりに結果を出している。
今まで何人かアーティストの担当をした事はあったけど、正直言うと雅には光る物を感じた。
・・・私は音楽に携わる人間じゃないから宛てにならないと思うけど。
でも、聴いていると何だか自然と落ち着くのだ。
もしファンや周りの人が、エッチするのが大好きなんて知ったらどう思うだろう?
いずれの曲の歌詞も、マネージャーとの性交を元に書かれたものと知ったら・・・
直接的な表現はしていないけど、温もりや愛情を求める人間の気持ちが綴られている。
『抱き締めて、抱き締めて・・・♪』
それにしても、歌声だけは私の心を擽ってくるんだね。
もし私がマネージャーじゃなかったら、知らなくていい事を知らないままだから、幸せなのかな。
それとも、雅の・・・いや、MiYaBiの事を知りたくなるのかな・・・?
私は信号が青になったのを確認したので、考えるのを一旦止めた。
マネージャーの仕事は、芸能人をちゃんと管理する事。
だから・・・
〜〜続く〜〜