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階段を上る時
【その他 官能小説】

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階段を上る時-11

「あぁ!悠斗のが出てる・・・いっぱい私の中に熱いのが出てる!!熱いよぉ・・・あん・・熱い精子でまたイっちゃうぅ・・!」
彼の熱を感じながら彼女はまた達してしまったようであった。互いに達しながら強く抱きしめ合い、体温を感じあう・・・。遥奈は軽く痙攣を繰り返しながら悠斗の背中にしがみついていた。広い背中に爪が食い込み僅かながら出血をしていたが、彼もまた遥奈との結合に深い快楽を感じていた為、それに気が付くことは無かった。遥奈の花弁から白い濁った液体が流れ落ちる。互いの体液が混じりあい、淫猥な香りを漂わせていた。全てを注ぎ込んだ彼は改めて見る彼女の姿に、感動すら覚える美しさを見出していた。無邪気にはしゃいでいた彼女の面影は見られず、大人の彼女がいた。頬に伝わる汗が淫靡で美しい。物語で聞く淫魔とはこういうものなのであろうか?と可笑しな想像まで掻き立てられる程であった。あまりの脱力感に目も開けられないほどであった彼女であったが、自分を見つめる視線に気が付き目を開けた。そこには今まで、そしてきっとこれからも自分を愛してくれるであろう、男性の姿があった。両腕を伸ばし彼の頬に触れる。とてもとても愛しそうに彼の頬を撫でた。そして交わしたキスは今までのどんなキスよりも愛を感じ取れるものであった。その夜、二人は何度も何度も求め合った。全てを忘れるかのように・・・真っ白になるまで・・・

 青く澄み渡った空が広がっていた。窓の外には砂浜が広がり、海の香りが鼻をくすぐる。朝の日差しが眩しく、一瞬目を背ける。悠斗はコーヒーを片手に、まだ凍てつく寒さの海を眺めていた。夏は朝早くから多くの観光客などで賑わうこの街も、今は散歩をする人の姿がちらほら見られる程度であった。昨晩の感覚が体に残る。背中に感じる微かな痛みが、昨日の出来事を思い出させる。しかしその出来事がまるで何年も前のことに感じられた。彼の横にいるはずであろう、彼女の姿はそこに無かった。昨夜を共にした最愛の女性・・・手を伸ばせば触れることの出来た、彼女の体温を感じることはもう出来なかった。書置きは無かったが、携帯に一通のメールが残されていた。
《私はあなたを忘れない。ずっと・・・だからあなたも私を忘れないで。どんなに辛い事があっても、あなたとの思い出があればきっと乗り越えることが出来ると思います。あなたを愛した時を私の宝物に、そしてあなたに愛された時を私の財産として生きて行きたい。あなたにもらった愛の言葉を胸に刻んで・・・。最後に一言伝えたい・・・あなたにもっと早く逢いたかった》
涙が溢れていた。とめどなく流れる涙が床に滴り落ちる。悠斗にはこうなることがわかっていた。彼女の優しさ故の行動であろう。あのまま一緒にいたら俺はきっと遥奈の傍を離れず、自分の家庭を捨てていたに違いない。遥奈はそれを分かっていたのであろう。彼女は言っていた。
「自分の幸せのために、誰かを不幸にすることは出来ない・・・」
あの時から別れを感じ取っていた。彼女との出会いは別れに結びつくことも分かっていた。知りながらその事を記憶の彼方に追いやり、彼女との時を過ごしていたのだった。想い出はいつか薄れていくが、絶対に俺は彼女を忘れない。強い決断を胸に刻み・・・彼は携帯のメモリーから彼女の番号を消した。遥奈もまた揺られる電車の中、赤い目を擦りながら彼の番号を消したのであった。少女は大人になり、青年は一つの想い出を一生の記憶にしまいこんだ。二人が再び出逢うことはないだろう。日常に消え行く二人を見て、その変化に気がつくものはいないかもしれない。だが二人は確実に人生の階段をまた一歩上ったのだ。そしてまたどこかで、誰かが階段をまた一歩上っていく・・・

終わり


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