嘘みたいな I LOVE YOU-1
【お疲れ☆今度の金曜のみんなとの飲み会は7時にいつものトコ集合ね(^-^)がんばって仕事終わりにしてね♪
今日、芹香とご飯食べ行くんだけど、ケンボーも仕事早く終わりそーだったらおいで☆
千優希より】
ただ今仕事の休憩中。携帯を見ながら、コーヒーを飲む。アイツからのメール。
また、ちゃんと飯食えって言われんだろーな…。残業ばっかで買い弁が多い俺を心配して、飯に誘ってくれることが多い。ついでっぽいのが、玉にキズだが。
来れたら来い、みたいなところが、アイツらしいと言えばアイツらしい。
俺、藤木健太郎(ふじき けんたろう)27歳。
世間では一応大手に入る電器メーカーに勤めてる。
高校、大学と理系に進んだにもかかわらず、やりたい仕事はやれずにいる…営業推進部の平社員。
企画だ、会議だと日本中飛び回り、はたまた海外出張まであるとゆー、せつない状況だ。
アイツとは、高校からの親友・北川千優希(きたがわ ちゆき)。
ちっちゃくて童顔で、天然のよーでいて実はしっかり者で、しっかりしているよーで、実はおっちょこちょいな、不思議なヤツだ。
アイツと知り合ったのは、高2の春。
中学ん時の友達の、片瀬 亜由美(かたせ あゆみ)が花見に連れてきたのが初対面。
ちっちゃくて、ほわほわしてて、桜吹雪の中でにっこり笑った姿がすごく印象的だった。インスピレーションってやつを感じたのかもしれない。
ただそれまで、周りにさんざん彼女は作らないって言い続けてきただけに、気に入ったなんて言いだせる雰囲気じゃなかった…。
片瀬があっさり「ケンボーは彼女作らない主義なんだ。」なんて言いやがって。
以来アイツと俺は親友同士。アイツはそう思ってるんだろう…。すっげぇニブイからなぁ。
んじゃ、今日は1.5倍速で仕事終わらすかっ!さっさと会議の資料作っちまおう。
PM9:00――やっと資料を作り終えて会社を後にする。
さっそく千優希に電話。
「もしもし。俺だけど、今どこだ?」
『あ、ケンボー。お疲れ。まだ【シエスタ】にいるよ。今会社?』
「ああ。今出たとこ。んじゃ今から行くわ。」
『わかった。待ってるね〜。』
アイツらがいる店【シエスタ】まで15分ってとこか。
電話を切って、俺は少し早足になる。
アイツの笑顔に少しでも早く会うために…。
「ケンボー、こっちこっち!」
店に入るとアイツが手招きで合図した。顔を見ただけで、疲れがフッと飛んでく感じだ。
席に座ると、奥には千優希の大学の友達・芹香ちゃんが座っていた。千優希とは違うお姉さまタイプの女の子だ。
「あいかわらず忙しそうなんだね、ケンボーさん」
千優希が紹介する時に、俺をあだ名で紹介するから、高校以降千優希を通して知り合ったヤツはみんなこんなあやしい呼び方をする…。
友達と出掛けてても、たまにこうやって俺を合流させてくれたりする。
千優希は俺のことどう思ってんだ?
…ふと考える時がある。
会えない時は無性にこの関係をどうにかしたくなるけど、こうやって会うとこいつの笑顔を見てられるなら、このままでもいいかって思う…。意気地なしなんだな、俺って。この関係が壊れるのが恐いんだ。