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てき屋のマコ
【コメディ 官能小説】

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てき屋のマコ1-2

「あ!あの御代はけ…け…結構でございまするです」
毎度の事ながら慣れない敬語で御代を断るマコ。
だが…。
「そんな訳にはいきませんよ」
ニコやかな微笑みと共に千円札を押し付けてくる誠司。
「いえいえ、滅相もござんせん…この海の平和を守っていらっしゃる…」
いつもの様に長口上をトツトツと語るマコ。
だが、その間にナンシーの手に千円は押し付けられている。
これもいつも事だった。
「じゃ…せめてコレ」
キンキンに冷えた缶ジュースをお釣と共に手渡すマコ。
「ありがとうございます」
誠司は爽やかな微笑みを浮かべると。
お好み焼きと缶ジュースを手に海岸の方へと戻って行った。
「カッコいいッスねぇ」
「おぉ」
その後ろ姿をうっとりと見つめるマコとナンシー。
「あっ!ナンシーおまえ!」
不意にナンシーの方を見たマコ。
ナンシーが握りしめていた千円札を取り上げ様と手を伸ばす。
「なに!すんスか!」
ナンシーも取られまいと必死だ。
「おまえ!それは売り上げだろ!アタシんだろ!」
「後で千円、バックしやス!この千円札はうちのッス!」
誠司の千円を巡る攻防…これもいつも事だった。
「あの〜」
お好み焼きを買いきた小学生が声を掛けるまでこの攻防は続いた。

夕方。
日中は強烈な熱気を孕んでいた太陽も幾分優しくなった。
海岸からは駅や駐車場に向かっての人の流れが出来始めた。
「半額!半額!半額だよ!」
「お土産にお好み焼き!いかがッスかぁ〜」
マコとナンシーはさっきの攻防などスッカリ忘れて在庫整理に余念が無かった。
特にナンシーは必死だ。
このままでは今日の日当は勝ち取った千円プラスお好み焼き数個になり兼ねない。
事実、それと同じ事は多々あった。
自分がダイエット出来ない原因はマコにある。
ナンシーは本気でそう思っていた。
が…。
結局はその時間からはそうそう売れる物でもなく。
閉店の時間となった。
夜間の営業は近隣との協定で禁止されている為、マコとナンシーは渋々閉店の準備に入った。

陽もとっぷり暮れてアパートに帰ってきたマコとナンシー。
元々はマコの部屋であったが。
いつの間にかナンシーも居ついていた。
マコも迷惑とは思っていない。
むしろ炊事洗濯等が苦手なマコだし、プラス在庫整理にはナンシーは大変便利であった。

ナンシーが風呂から上がると…。
先に風呂から上がったマコが売れ残ったお好み焼きを食べながらビールを飲んでいた。
ビールを飲みながら電卓を叩くマコ。
そしてテーブルにはナンシーの分のビールと。
ナンシーの分以上のお好み焼きが用意されていた。
もっとも今更、気にするナンシーでもない。
「お疲れ山脈ッス」
テーブルについたナンシーが缶ビールのプルトップを空ける。
「おぅ!」
マコも飲んでいた缶ビールをナンシーに向けてちょっと持ち上げた。
二人ともさっきの攻防などすっかり忘れている。
が…。
マコの眉間にシワが寄ったままだ。
今のマコは一応、経営者としての悩みを抱えている様であった。


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