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凪いだ海に落とした魔法は
【その他 官能小説】

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凪いだ海に落とした魔法は 1話-21

そうして僕と沢崎拓也の"寄り道"が始まった。
もう一度、僕は思う。例えそれが人生の分岐路に据え置かれた事件だったとしても、自分には選択肢などないのかもしれないと。自覚なきままにその出来事を許容し、疑いもなく示された道を歩んでいく。誰かの振ったダイスの目の数だけ僕は歩を進め、ふと振り返ってみたとき、初めて人生の分岐点を越えていたことに気付かされるのだ。とてもさりげなく、そこには何の注釈も示唆もない。だからこそ、その自覚なき選択を自らに納得させるために、人は"運命"という言葉を使うのだろう。

偶然で知り合った沢崎拓也の気紛れから始まった寄り道の先に、僕の人生に於ける重要なキャストが待っていた。つまりはそういうことだ。世界中の物語を彩る役者たちの中でも、異質な光を放つ沢崎拓也に導かれ、僕は一人の少女と不思議な縁を持つことになる。全ての運命はたったひとつの何気ない偶然から始まるのだという、ある種の教訓かもしれない。

日下部沙耶という少女がいた。僕はひどく婉曲的な道程を経て彼女と知り合い、大急ぎで恋に落ちた。それは日曜日の長閑かな昼下がりに起きた震災のように思いがけない、不可避の恋だった――。


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