Island Fiction最終回-4
「んんぐううぅぅ、はぁぁ、あぁぁ……」
バイブを欲して、地を這うタコのように手足をうごめかせた。
発情したわたしにとって、バイブレーターは糖尿病患者にとってのインシュリン注射のようなものだ。
パンツを下ろし、クリトリスを人差し指と中指で挟むと、肉莢から起き上がった中身がプクリと顔を出した。
潤みきった陰唇の柔らかさと熱を楽しむ余裕はなかった。
膣内の愛液を掻き出すように乱暴に指を動かした。
「あっああぁぁ――、んあぁぁ――っ、ううんん、うんあぁぁ――っ」
緩みきったわたしの体はさらにとろけ、熱を帯びていく。
突き入れた指が愛液でふやけそうだ。
「カスミさん!」
トウゴウの叫びはわたしの鼓動にかき消された。
扁桃体が異常を来し、情動機能が狂う。
何が本当の記憶で、どれが本当の感情なのか判別できない。
自分で自分が制御できない。
理不尽だ。
惨めだ。
悔しくて涙が溢れた。
わたしはただの器だ。
空っぽの器だ。
お父様に人生を踏み躙られ、アザレアに裏切られた。
唯一心を許せたはずの姉妹たちも失い、わたしは正真正銘の孤独になった。
別れを悲しむ者もなく、鳥に啄まれ、虫が集り、ウジがわき、海の底へ沈んで朽ち果てていく。
そんな終わり方がわたしには相応しい。
人は生まれ出る自由はないけれど、人生を終わらせる権利を有している。
流されるまま生きてきたわたしの、最初で最後の決断だ。
持っていた拳銃の先を自分のこめかみに当てた。
銃というのは真横に向けて撃つように出来ておらず、手首の角度が不自然だったけれど、引き金は引けそうだ。
銃口から発射された直径9ミリの鉛の弾は、頭蓋骨を貫通し、大きく変形しながら水分たっぷりの中身を破壊し尽くすだろう。
その時わたしの意識はどうなるのだろうか。
テレビのスイッチが切れるように、プツリと暗転するのだろうか。
雌の体液で濡れた人差し指に力を入れていくと、引き金のバネがキリキリと鳴った。
「待っててね……」
わたしは小さな声で天国のスミレ姉様とクルミに告げた。
低天に銃声が轟いた。
耳をつんざき、思考を奪う、鋭い音だ。
気がつけば、トウゴウがわたしに覆い被さっていた。
わたしの右腕を押さえつけ、鬼の形相で睨み付けていた。
「銃口を向ける相手が違うでしょ!」
トウゴウの言葉は胸に響いた。
かつてアザレアはこんなことを言ったことがあった。