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Island Fiction
【SM 官能小説】

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Island Fiction最終回-2

「終戦のどさくさに紛れて研究資料を持ち去ったのが、湯島の祖父、本名はキム・ガンス。恐らく実験の被験者だったのでしょう。湯島は戦後、研究を元に製薬会社を立ち上げて、社会的な成功者となったわけです」

会社は戦後の復興期の波に乗り、一族へ受け継がれるころには、資本金百二十億円を超える大企業へ成長していた。

大学を卒業すると、湯島は一族の三代目として湯島製薬へ入社する。
湯島は周囲の期待を背負い、見事に応えた。
そして、わずか三十八歳にして経営陣に迎え入れられる。

その頃から研究所員だったササキと共に久坂機関の研究を進め始める。
人の意志を自由に操る久坂の洗脳術は湯島を虜にした。
もっとも、ササキの方は薬学的なアプローチの方に夢中で、湯島とは親密な協力関係ではなかったようだ。

湯島は四十二歳で代表取締役に就任。
しかし、僅か一期で退任する。
会長職へ退き、その頃手に入れた無人島へ籠もると、研究に専念するようになる。

湯島は島の人間を洗脳して操った。
ハーレムという下卑た欲望のために、わたしたちの人生を、存在そのものを卑しめた。

アザレアは屋敷の書斎から湯島の研究を手に入れたのだろう。
洗脳術の存在を秘匿する。
彼女の目的はそんなところだ。
洗脳を使い、何人もの人間を操り、殺害し、島を知る人間はわたしだけになった。
間違いなく、わたしの口も封じるつもりだ。

「こいつはオーストリアのグロック社製の銃で、撃鉄が露出してないし、安全装置も内臓式で、余計なものは付いてないので、素人でも扱いやすいと思います」

と、例のバーからわたしが持ち出してきた拳銃を手に持ってわたしに説明し、これは第二世代の型です、第三世代ではフラッシュライトなどのオプションを装備できるように銃身の下の所にレールが付いてますから、と無用なトリビアを付け加えた。

「弾は三発残ってます。一発撃ってみてください。体験しておかないと、いざという時に戸惑いますから」

トウゴウは弾丸が詰め込まれた弾倉を見せた後、グリップの下へたたき込み、上部のスライドを引いて初弾を装填した。

わたしは銃についたトウゴウの手油をTシャツの裾で拭き取ってからグリップを握った。

固めの杯みたいなものだ。
これはわたしと悪魔との契約だ。
どこか儀式めいていて、嫌いではない。

「暴発の危険が低い分、トリガープルには癖がありますよ」

わたしはデッキの上に立って故郷の島と向かい合った。
ゆっくりと両腕を伸ばして銃をかまえた。
拳銃としては軽い部類になるらしいけれど、わたしには両手で保持するのも一苦労だ。

スライド上部についた銃身側の凸と後方の凹の照準器を合わせた。

引き金は想像以上に重い。
壊れているのではないかと疑ってしまうほどだ。


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