幸せの形-1
◇幸せの形
ピピピピピピピ
けたたましい目覚ましのベルで目を覚ますと頭の上から目覚めのキスが降ってきた。
「レオン、おはよう」
「んみゃ〜う」
ロシアンブルー特有の濃いシルバーの体を撫でるとゴロゴロと喉を震わせた。
僕はベッドから下りようと体を起こすと手首に何かが引っ掛かってぐっと体を引っ張られた。
「レオンにはおはようのキスをして僕には無いのかな?」
「おはようございます。蒼介さん」
ゆっくりと体を起こして隣でまだ目をつぶったままの彼にキスをする。
コーヒーを飲みながら支度を済ませ、再び住人達にキスをしてすでに活気付く市場を抜けて地下鉄へ乗り込んだ。
「あ、その受注ちょっと待って下さい。ジェイクに聞いてみるから」
僕は人ごみをすり抜けながら慌しく携帯を切ってオフィスに駆け込む。
「Sorry!」
「Misaki! Too Lite!」
中では同じようにバタバタと人が動き回り、僕が登場すると一斉に書類に囲まれた。
あれから5年が経ち、今はワシントンで服のデザイン会社でデザイナーをしている。
最初は英語はわからないしホームシックにかかったりと大変だったが、最近ではすっかり英語も身につき、仕事も任されるようになってきた。
さらに今僕のブランドの立ち上げ準備でてんてこ舞いである。
ジャンルはもちろんロリータ服。
生地を選んだり、レースのサンプルを取りに本場ベルギーまで行ったりと大忙しだ。
あの日のあの選択が無ければ、今の自分はいないだろう。
今でもあの日が夢なんじゃないかと思ってしまう。
蒼介が引退宣言をした後、押し寄せる人を掻き分け家へと戻った。
「どうして引退するんですか?」
「ん〜もう僕には実沙希がいればそれでいいからかな」
「え・・・」
「僕と結婚してくれないか?」
「!!!!!!」
蒼介は言葉を失う僕の左手を取り、ポケットからシルバーのリングを出して僕の薬指にはめた。
サイズもぴったりだ。