**誰も彼もちんぷんかんぷん**-4
「なにそんなに嬉しそうな顔してるの?」
「ええぇっ!!そ・・そんなつもりは・・」
どうしよう・・。急に恥ずかしくなってきた。
「俺相手に緊張することないのに。晴輝じゃないんだから。」
「そりゃ、そうですけど・・。」
この人、自分の顔を鏡で見たことないのかな。
「確かに瀬戸先輩はかっこいいですけどみんながみんな、瀬戸先輩のファンって訳じゃないんですよ。私だって他に好きな人いましたし。」
「へー、誰?」
「ええぇ?!」
なに言っちゃってるんだ私!!
別に告白しようとしているわけじゃないのに!!
本人目の前にして言うようなことじゃ・・。
「日和ちゃんに好きな人がいるなんて初耳だな。」
うわー!!さっきまでの優しい微笑みはどこにいったんですか?!
めっちゃドSの顔してる!!黒いよー!!
「それは片桐先輩には関係ありませんよ!!」
「言え。」
「言いません。」
「言え。」
「言えませんってば!!」
「言え。」
「言わな「言え。」
ちょっ近い・・。
先輩がどんどん迫ってくるにつれて私も後ろに下がるけど、これ以上は下がれないところまで・・。
本当に言えないよ!!こんなの告白じゃん!!
「言わないなら、このまま「言います!!言いますから離れてください!!」
なんて満足気な顔で離れていくんだ、この人は。
「で、誰?」
「えっと・・それは・・その・・」
「あと3秒以内に言わないとジャイアントスイング」
「ええぇぇーー!!??」
「3・・2・・1」
「かっ・・」
「か?」
「か・・・」
「片桐・・先輩です・・」
「え?」
「あっあの本当に入学当初ですよ?!ちらっと見かけて、ちょっとかっこいいなーって思ってただけですからね!!深い意味はありませんし、憧れ的な?芸能人みたいな?そう!芸能人に憧れてちょっと気になってしまったレベルです!」
そりゃもう、全身から汗が出るほど真っ赤になって、息つく暇もなく一気に捲くし上げて、間違っても好きだったことが悟られないように必死で話す。
もちろん片桐先輩の顔なんて見れないから、ずっと自分の膝あたりで視線はチョロチョロぐるぐる。
頭の中はパンク寸前ちんぷんかんぷん。
そして先輩は何も言わない。
「あの・・すいません。変なこと言って・・。忘れてください!!私も塾があるので失礼します!!」
もう本当に明日からどんな顔して先輩に会えばいいのかわかんないよ!!
そう思いながら、少し夜に近づいた道を猛ダッシュでかけていく。
残された先輩が意外にも顔を真っ赤にしていたとは梅雨知らず、塾なんて優ちゃんと同じこと言っちゃったなんて余計な心配をしながら最近覚えた帰り道を全速力で走る。
駅に着くまでに、冷めろ、私の熱。
つづく