準備と変化-1
◇準備と変化
Ｓｉｄｅ／Ｓ
あの日の朝、一晩中泣いていた実沙希の腫れた目を見て、結局僕も彼と同じ事をしてしまってるなと心を痛めた。
でも僕は一ヶ月後の再会の方が楽しみで仕方ない。
一ヶ月後には僕が所属する秘密クラブのイベントがあるのだ。
そのイベントでは、通常のＳＭショーの他に奴隷オークションや調教師のコンテストがあり、篠田は奴隷オークションの商品として出る。
一体どんな風に仕上がるかな。
そして僕はこの調教師のコンテストに実沙希と出る。
コンテストといっても特別なことはなく、緊縛と審査員であるＳ嬢に調教されるだけなのでいつもの感じでやればいい。
だが短時間で綺麗な緊縛をすれば点数が良くなるので、あれ以降会う度に色々な縛りを実沙希に施していった。
「今日はちょっときつい体勢だけど大丈夫？」
「はい・・・頑張ります」
少し不安そうな顔をする実沙希の頬を撫でると、目を閉じて僕の手の感触を味わっている。
撮影会のときに縛ったエビ反りの体勢で頭を少し下に下げ、膝は固定せずに膝と足首を支点に吊るすと、反りが緩くなってだいぶ楽になるはずだ。
そして左右の足首の高さを変えて広めに位置することで、まるで空中に舞っている様な姿になった。
無数の張り巡らされた縄がまるで蜘蛛の巣に見え、実沙希が捉えられた蝶のようだ。
しかし、やはり体へのダメージが大きく、あばらに食い込む縄が呼吸を制限させてしまって実沙希はすぐに苦しそうな顔になった。
「やっぱりすぐに息が上がるね・・・これはやめよう」
「・・・ん・・・だ、大丈夫です・・・」
頭も下がっているので血が段々顔に下がってきて真っ赤にしながら、実沙希は喘ぐように言う。
今までの中でも一番きついはずだ。
「この体勢・・・きつい、ですけど・・・気持ちいいです」
僕は一つ大きな溜息を付いて苦しげに喘ぐ実沙希を見つめ、実沙希をこんな体にしてしまったのは僕なんだと実沙希に対して申し訳ない気分になった。
すばやく体を降ろしてマッサージをしてあげるとと潤んだ瞳で僕を見つめる実沙希。
「実沙希がいいと思うならこれでいこうか。あとは服は着る？裸でも着たままでもいいんだよ」
「・・・服、着たいです。あ、でも恥ずかしいとかじゃなくて、僕の本当の姿を見てもらいたいというか・・・あの・・・」
実沙希はきっとあの可愛らしいロリータ服を着て、綺麗にメイクをして女の子のように振舞う自分が本当の自分なんだということ言いたいのだろう。
「大丈夫だよ。わかっているから」
「ありがとうございます・・・」
僕が優しく抱きしめると実沙希も安心したように大きく息をした。