Island Fiction第7話-5
「そう。ウソよ」
「おちょくってるの?」
「まあ、要するに、洗脳……、つまり人格を破壊してから上書きするというより、深層に潜む人格が上層の人格を侵食するとでも言うべきかしら。わたしはそれを“サトリ”と呼んでるんだけど、サトリを得た人間は、己に内包する特定の欲望を抑えられなくなるの」
「まるで神のお告げみたいね」
「サトリは大脳辺縁系などの低次な脳細胞の影響を受ける根源的な欲求には強く作用させやすいの。性欲はその代表的なものだわ。あなただって、花蜜が溢れてきてるんじゃないの?」
「バカ言わないで」
「どうかしら。やせ我慢はよくないわよ」
アザレアはそう言いながら、股間のペニスをわたしに見せ付けるように突き出す。
「いや……」
この巨大な肉茎で膣内の粘膜を蹂躙されたら、と想像すると目が眩む。
それでいながら目を逸らせられない。
「やめなさい……」
わたしの脳裏に下劣なイメージが張り付いて離れない。
テーブルの上にいたはずの姉様がいつの間にかカズキに寄り添い、頭を包み込むように手を回して口づけをした。
湿った二人の唇からお互いの真っ赤な舌が覗いた。
姉様はカズキを貪りながら、自分のヴァギナの奥深くまで指を埋め込んだ。
上と下の口が同時に水音を響かせ、安アパートの部屋を支配していく。
「やめて……」
訴える声には力が入らない。
「はあぁ、あふぅうん、早く、はぁぁ、はやくぅ、はやく、ちょうだい、太くて、硬いので串刺しにしてぇ」
姉様は苦しそうだ。
床へへたり込み、そのまま寝そべってカズキの刀身を招き入れた。
大きく張り出したカズキのかり首が肉の抵抗を押しのけて突き破る。
「あああうんっ!」
「お母さんの中、熱くて、気持ちいいよ」
「突いて……。いっぱい、突いて……」
カズキが腰を打ち付け始める。
「ああふぅぅん……、あぁぁううん……」
抜き差しの度にラビアが生き物のようにペニスに絡みついた。
「ふうぅぁん、深いぃぃ、先っぽが、喉から飛び出して来ちゃいそうぉぉ」
「やめなさいよ! 相手は子供じゃないの!」
「あなただって、六歳でフェラチオ覚えて、八歳でアクメ知って、十歳で処女を失って、十一になるころには淫乱だったじゃない」
口調はアザレアのものであり、カズキではない。
でも、激しく腰を振る少年は五歳くらいの子供であり、擦り合う粘膜と肉のぶつかり合いは現実のものだ。
愛液でぬめって光るペニスとヴァギナは本物のはずだ。
わたしはいったい誰なのだろうか。
わたしの存在自体が疑わしい。
何が正しくて何が間違っているのか迷妄した。