Island Fiction第7話-2
「あら、そうなの? カスミは昔からオナニー好きだったものね」
「そ、そんな……」
淫奔であるのは事実だけれど、そんなに明るく言われても返答に困る。
「お母さん、僕、さっきからチンチン痛いんだ」
カズキはおもむろにズボンを下ろすと、股間には子供のモノとは思えない立派なペニスがそそり立った。
チンチンなどという愛くるしい呼び名の代物ではなかった。
「しょうがないわね」
鼻先へペニスの先端を突きつけられると、スミレ姉様は自然に舌を伸ばして手で根元を支えた。
瞳は愉悦の光を放っていた。
ゆっくりと肉塊をしごき上げる仕草には迷いも躊躇もない。
服にこぼした食事の汚れを拭き取るかのようだ。
「いったい、何を……」
言葉が続かなかった。
わたしの反応は至極当然だと思う。
そうやって自分で自分に確認しなければ、容易に受け入れてしまいそうなほどに自然な行為として映った。
二人はわたしを置き去りにして、肉欲に溺れていった。
姉様の唇が尿道口に軽く吸い付いた。
そして裏スジをチロチロとくすぐり、肉棒を粘っこい唾液まみれにしていく。
「どう? 気持ちいい?」
と姉様が上目遣いで訊く。
「うん。上手だよ」
カズキ君はブルブルッと武者振いのように体を震わせた。
姉様はペニスから口を離さずに自分の服をはぎ取り、下着姿になった。
すでに火照った体にはうっすらと汗が滲んでいた。
「ずいぶんと、面食らってるみたいね」
カズキ君は人が変わったように不気味な笑みを浮かべた。
そして、わたしを真っ直ぐ見つめた。
「これが洗脳術よ」
部屋のどこかにあるスピーカーからの音に、クチパクで合わせたような感じだった。
もしくは彼に憑依した誰かが話しているかのようだ。
彼の口から発せられた言葉とはとても思えなかった。
「な、何を言ってるの?」
「原理は簡単なの。一つのイメージを記号化して、視覚的、聴覚的に、脳の記憶系を経由して報酬系へ働きかけるの。潜在意識に作用するという意味では、催眠術に近いかも知れないわね」
「あなた、誰?」
彼の言葉遣いは彼のものではない。
別の誰かである。
それは間違いない。
問題は誰であるのかだ。