澪19歳-1
「なあ、どっちにするんだよ?」
澪は、食べかけたお菓子を口にくわえたまま動きを止めた。
昼下がりのキャンパス。
午後からの講義が休講になったので、お昼ご飯を食べた澪はこれからどうしようか考えながらお菓子を食べていた。
そこへやって来たのは、幼なじみでもあり、クラスメートでもある悠紀(ゆうき)。
栗色の髪、目はクリッとしていてよく女の子達に弟キャラだね、と言われるくらいかわいい外見をしている。
…大きな声で言えないけど、澪は悠紀に告白されていた。
「もう少し待って」と返事を待ってもらってもう1週間。
悠紀が痺れを切らすのも当たり前だ。
だけど、澪には即答出来ない理由があって…。
「ごめん…まだ迷ってるの。もう少し待って」
「まだ迷ってるのかよ?俺だって我慢の限界だぜ?」
「本当ごめん!まだ、気持ちの整理が出来ないというか…」
澪がためらってる理由。
澪自身も信じられないのだが、悠紀の他にも同時に告白してきた人がいたのだ。
「智(さとる)先輩にも失礼だよ」
サークルの先輩の、智先輩。
長身で、洗練された外見。
健康そうに日焼けした肌。立っているだけで華があって、目立つ存在だった。
智先輩目当てで入部する女の子も少なくない。
外見だけだと高飛車そうに見えるが、智先輩は全くそんなことはなく。
むしろ、みんなに気を使って動くタイプでサークルでも頼りにされる存在だった。
悠紀が表立ってキャーキャー騒がれるタイプなら、智先輩は本気の女の子が影からそっと想いを寄せられるタイプだ。
澪も例外ではなく、ひそかに憧れを抱いていた。
『…好きなんだ。付き合って欲しい』
まさか、智先輩にそう言われる日が来るなんて。
ぼーっとしていると、智先輩は『返事は今度でいいよ』と優しく微笑んだ。
何だか夢心地で、智先輩が去った後もしばらくベンチに座ってぼーっとしていた。
そこへ。
『みーおっ!』
後ろから抱き着かれる。
…顔を見なくても誰だかわかる。
『もう、止めてよ』
澪は悠紀の腕を振りほどく。
『何で〜?俺澪のこと大好きなんだもんっ』
ニカッと笑う悠紀を見て澪はため息をつく。