澪19歳-2
『そんなこと言ってるから誤解されちゃうんじゃない…。この間だって悠紀のファンの子に色々言われちゃったし、もう止めてよね』
『やだよ』
『はぃ?』
『今までも澪は本気にしてくれなかったけど、俺本気で澪のこと好きなんだ』
『…え?』
澪は悠紀を見た。
悠紀の眼差しは真剣そのものだった。
急に、悠紀が知らない男の人に見えてドキドキした。
『好きな奴、いないんだろ?だったら付き合っちゃおうよ』
…そう言われ、澪は智先輩からも告白されていたことを思い出して途方にくれた。
ーそれから1週間。
澪はまだ結論が出せず、二人に中途半端な態度を取り続けていた。
贅沢だけど、どっちも好きなんだ。
智先輩は入学してからずっと憧れていた人だし、悠紀は当たり前のようにずっと側にいた存在。
どちらかを選ぶなんて、出来ない…。
澪は本気で悩んでいた。
そんな澪を、悠紀は複雑な思いで見つめる。
澪が決められないのなら…。
悠紀はある決心をした。
次の日。
澪は悠紀からのメールで呼び出されて、ホテルの喫茶店にいた。
最近出来たホテルで、ランチがおいしいと評判で澪も女友達と来たことがある。
まだかな…。
澪は落ち着かない気分で紅茶を飲んだ。
ピピピ…
メールだ。
携帯を見ると悠紀からだった。
『上の部屋で待ってるよ』
と、部屋の番号が記されている。
…なんで部屋に?
疑問に思いつつも澪は会計を済ませて、悠紀が待っているであろう部屋に向かった。
ホテルの内装は、女性ウケを意識しているのか柔らかい色を基調にしていて、インテリアも凝っていた。
素敵な内装…。
ランチを利用したことはあっても客室に足を踏み入れたことはない。
澪は緊張気味に悠紀が呼び付けた部屋のドアをノックした。