ほたるのひかり、まどのゆき。-8
――ブブブブブッ!!
「うぉっ!?」
いきなり机の上で震え出した携帯が鳴らす音に、軽く飛び上がるくらいにビビった。電話か?
慌てて開くと、発信者は――先輩だ!
「は、はい。もしもし!」
『うわっ。どしたの?なんか元気だね?』
「いや、ちょっとびっくりして……」
『? そっか』
「えと、どうしたんすか?」
別に先輩から電話が掛かってくること自体は珍しい事ではない。ただ、今日みたいにたくさん話した後でってなると……あまり記憶に無い。
『ん―……特別用事ってわけじゃないんだけどね?なんかさ、今日元気が無かったみたいに見えたから』
「俺がですか?」
『違った?』
「……………」
先輩の卒業の事を考えてしんみりしてしまっていた自覚はあるので、反論はできない。
『まったくもう。……悩みがあるなら相談しなさいよ。私が受験生だからって遠慮してるのかもしれないけど、逆よ?あなたがキツそうなの見てたら、心配で勉強なんか手がつかないんだから』
結局こうやって電話かけちゃったしね、なんていう先輩の呟きも上の空で聞いていた。
あぁもう、この人は……本当に!
「あの、先輩」
『ん?なーに?』
「大好きです」
『ちょっ……!?』
この反応は、絶対電話の向こうで真っ赤になっている。間違いない。
『こっちは真面目に心配してるのにぃ……』
「分かってます。だから真面目に返したんですよ」
『……知らないっ』
つーん、とした声が電話口から聞こえてくる。おそらく頬を膨らませている事だろう。
学校や街など、周りの目があるところではかなり大人っぽい雰囲気なのに、二人になったらちょっと子供っぽくなるのも俺が大好きな先輩の特徴の一つだ。
まぁでも、ホントに心配してくれてるみたいだし……ちゃんと話しておいてもいいだろう。