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ほたるのひかり、まどのゆき。
【青春 恋愛小説】

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ほたるのひかり、まどのゆき。-7

▼▼

電車通学の先輩を駅まで送って行き、俺はそのまま自転車に乗って家へ。
夕方ともなると、さすがに風も冷たい。マフラーがあってよかったと心底思う。

「………………」

こうして一人になると、いろいろ考えてしまう。
さっき音楽室で、先輩に言おうとしたけど言えなかった事。本当に小さな、でも沸き上がってしまった不安が心をよぎる。


――もし遠距離恋愛になっても、俺達は恋人でいられるんだろうか?


(……口にしちゃったら、それこそ笑い飛ばされそうだよなぁ)

なーに今から弱気な事言ってんのよ?あなたらしくない……とか。
先輩はそういう人だ。

別に今の関係に心配は無い。俺は先輩が大好きだし、……先輩も俺の事を好きでいてくれてるのはいつも感じてるし。
ただ、不安なのは……『長い間会えない』という未知の状況。
先輩は大学に行ってしまった後で、たくさん新しい出会いがあるだろう。そんでもって美人だから絶対モテるだろうし、飲み会とかで酒の勢いでタチの悪いやつとかに絡まれたりしたら……あ――――――ッ!!!!

―――はっ!?

(いや、心配なんかしなくても先輩は浮気なんかしないって信じてるけどさ)

……まぁ、要するに。
単純に俺は寂しいんだろう。先輩がいないっていう状況が。
なんともヘナチョコで、しかし納得のいく理由だ。

それからしばらくはいつも通りの生活パターン。家に着いて、夕飯を食べ、風呂に入り、机へ向かう。
そんでもって宿題やって、勉強してるうちに眠くなってベッドへダイブ――ってのが、いつもの流れなのだけれど。

「……進路、か」

先輩との会話がまだ頭に残っていた俺は、机へ着いて鞄から一枚の紙を取り出した。進路希望調査、と銘打たれた紙を。

そもそも俺はまだ、自分が将来どういう職業に着きたいとか、どんな事を勉強したいかなんて何も決まっていなかったりする。
だからとりあえず三者面談対策のために、第一希望から第三希望まで『今の自分の学力ならまぁ手が届く範囲』の大学が書き連ねてあるワケなのだが。

(……でも、それじゃ)

先輩との遠距離恋愛は免れないだろう。年に何回かしか先輩に会えない生活なんて……考えただけでも死にたくなりそうだ。

そりゃ、欲を言えば俺だって国立に行きたいさ。学費的な問題もあるし――もっと欲を言えば、先輩と同じ大学に行きたい。
でも、先輩の狙う大学は今の俺の学力じゃ到底届かないわけで。具体的に言うと……一年くらい浪人しなきゃ厳しいくらい。

「…………はぁ」

無意識のうちに、大きなため息をついていた。
なんとなく――このままじゃ、いつの日か先輩との関係が終わってしまう気がして。
改めて考えるとそれは本当に、真っ暗な未来だった。

(……ホントに、すっかり惚れちまったなぁ)

いなくなったら生きていける気すらしない。
こんなの先輩からしてみれば、重過ぎる話だろうけど。

いろいろ取り留めのない思考を浮かべつつ、しばらくそのままぼんやりとしていて――



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