ほたるのひかり、まどのゆき。-4
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それから三ヶ月が経ち、夏休みを目前に控えた七月下旬。俺は改めて先輩に告白し……晴れて恋人となったのだった。
あの日の喜びは未だに忘れられない。
「もう一年半、経つんすね」
「なーにジジ臭い事言ってんの。まだまだ若いでしょうが」
「先輩もですけどね」
「やぁねぇ。もうちょっとで高校生って肩書も無くなるただのおばさんだってば」
そう言って肩をすくめるが、恋人っていう贔屓目を抜きにしても……先輩はすごく綺麗だと思う。何がおばさんなものか。
「………………」
「………………」
二人とも何を言うでもなく、しばらく静かな時間が過ぎる。
今日は部活も無いため、夕暮れ時の音楽室には俺達以外の人間はいない。
まぁもっとも、人がいないであろう事を期待してこんな時間にここに来たわけだが。……二人に、なりたかったから。
一年程の短い期間ではあるが、先輩に出会い、そして部活を通してたくさんの時間を一緒に過ごした音楽室。
先輩は、懐かしそうに目を細めて部屋の中を見回していた。
「……そっか。部活引退してから、もう半年以上経つのか」
「懐かしむには、まだ早くないっすか?」
「そうかなぁ」
「まだ、卒業するわけじゃないんすから」
そう。
『まだ』卒業はしない。
でももう時間の問題ではある。三学期に入れば登校日数自体が減るだろうし、ましてや音楽室に入る事なんてほとんど無いだろう。
「………………」
「なーに辛気臭い顔してるのよ。もしかして私がいなくなるから寂しくなった?」
俺は暗い顔をしていたのか、先輩がからかうようにそんな事を言ってくるので、
「……寂しいですよ。すっげぇ寂しいです」
「――っ」
真面目に返してやった。
む、と一言唸って赤くなる先輩。本当にこういうトコはすっげぇ可愛いのだ、この人は。
「そ、そう。まぁ別に全く会えなくなるわけじゃないし、さっきも言ったけど電話したかったらいつでもかけてきていいからさ」
照れてる照れてる。
いやまぁそういう俺も多分顔赤いけど。
「――そっすね。我慢できなくなったら……そう、させてもらいます」
「ん」
それから窓の外を見てお互いに顔は合わせないままに、照れ隠しをするように他愛のない話をした。
――そうやって、しばらく時間が経って。