投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ほたるのひかり、まどのゆき。
【青春 恋愛小説】

ほたるのひかり、まどのゆき。の最初へ ほたるのひかり、まどのゆき。 4 ほたるのひかり、まどのゆき。 6 ほたるのひかり、まどのゆき。の最後へ

ほたるのひかり、まどのゆき。-5

(……大学、か)

沈みかけの太陽が紅く染めているグラウンドを眺めながら、俺はぼんやりとそんな事を考えていた。

この前行われた進路調査で、俺は『希望する進路』の欄に成績的に行けそうな適当な大学を書き、適当な理由を付けて出した。
このまま就職して社会に出てやっていけるとは思えないし、一応進学校なので回りは全員進学を目指してるし。

入学した頃は大学なんてまだまだ先の話、と思っていたのだが……気付けば俺の高校生活も折り返し地点を過ぎているわけで。

(俺もあと一年……か)

そんなことを考えていたら、

「ね、もう進路希望調査って終わったでしょ?希望進路どうしたの?」
「……っ」

計ったかのように先輩はそんな事を聞いてきた。

「あー……、一応進学で考えてますよ」
「一応ってなによ一応って」
「ん、なんつーか……漠然としてるっつーか」
「ふーん……。大学どこ書いたの?」

俺はちょっと考えて、先輩相手に見栄を張ってもカッコ悪いだけだと思い、紙に書いた大学を伝える。
ランク的にはまぁ中の上、くらいの私立大学。

「ん、まぁ確かにそこなら今のままでも行けそうだけど」
「今のままでも、って言っても勉強は必要ですけどね」
「分かってる。順当にいけばって事だよ。………………、」

まだ何か言いたそうな先輩。
……ま、なんとなく分かる。先輩が受験するつもりなのは県内の国立大学で、俺の書いたとこは県外だ。
つまり、もし来年俺が無事に合格したとしても。

(遠距離恋愛に……なっちまうのかな)

そういう事だった。
あまり考えたくはない未来。というか、『毎日でも会えるのが当たり前』な現状だから『会いたくても会えない』っていう状況が想像もできない。

「………………」
「ん?どうしたの?」
「……あの、先輩。もし――」

胸の中に生まれた小さな不安を先輩へと漏らしそうになって、

「………ん、あー、いや。なんでもないっす。なんでも」
「えーっ?何よそれ」
「いやいや、やっぱり聞くような事じゃなかったんで。気にせんでください」
「気にしないで、って言われたら余計無理でしょう……。ま、いいけどさぁ」

そう言ってため息を一つ。

「ホント、私がいなかったらあなたがちゃんとやっていけるのか心配よ」
「俺も心配です」
「こーら。何を真面目な顔で頼りない事言ってるのよ」

こつん、とおでこを小突かれた。


ほたるのひかり、まどのゆき。の最初へ ほたるのひかり、まどのゆき。 4 ほたるのひかり、まどのゆき。 6 ほたるのひかり、まどのゆき。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前