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恋愛小説
【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(2)-4



でもだからといって、千明は僕の側を離れようとはしなかった。そもそも僕の気持ちが変わるまで待つと言い続けていたのだから、その変化の無さは想定内だった。
いや、想定内ではあったが、やはり気持ちをコントロールするのは簡単じゃない。恋とは暴走するエネルギーの塊だと僕は思っている。千明の事は好きだ。でも彼女に向けるものとは、まったく異種の感情であることを、僕はどんなに説得されようと否定できない。




新入生歓迎会は天文サークル行きつけの飲み屋で行われるのが通例だ。ことしも例外とはいかず、座敷の飲み屋「いっこう」に集まったのは新旧会わせて50人を超す大所帯。木村さんの挨拶も快活を極めた。
「えぇー、新入生の皆さん!入学おめでとうございまぁす!つきましてこの天文サークルへの参加、平にありがとう!みんなで楽しい学生ライフにしましょう!それでは、カンパーイ!」
「「「かんぱーい」」」

早くもアルコールが入り、あちらこちらで一気コールが木霊をはじめている。これも例年通りのことで、二年前の新歓では僕も標的にされたものだ。
「ちーくん、飲んでるかー!?」
僕のことをちーくんと呼ぶ人間は、この世で一人しかいない。井上千明、その人だ。
「水谷先輩って、なんでちーくんなんですか?確か名前ってアキラでしたよね?」
「ん?君は?」
「あ、私一年の橘 葵です。アオイって呼んで下さい」
「あぁ、僕は水谷。別に先輩ってつけなくてもいいよ。好きに呼んでくれていいから」
「ちーくん!?ちーくん、私のときはそんなこと言ってくれへんかったんやんかー!?」
千明は見事に酔っぱらっていた。女性はアルコールを強要されないのが新入生歓迎会のルールなのだが、千明の場合は強要したのではなく要求したのだろう。
「僕のことちーくんって呼ぶのは、この千明だけだから。別に気にしなくていいよ。理由もたいしたことないし」
「えっ?それなんですか?」
「ちーくんはねぇ、水谷→みずっち→ちーくん、ね?ちーくんでしょ?」
「原型無くないですか?」
「うん。僕もそう思うんだけどね」
そういう間も千明は中ジョッキを空け、注文を待つ間に他の人のグラスを奪おうと隣の机に突撃していった。決めた。千明にいくらせびられてもアルコールは飲ませない。
「なんかかわいいですね?私もそう呼んでいいですか?」
「うん?うん。まぁ好きにすればいいよ」
「やった。じゃあこれからよろしくお願いしますね!?ちーくん先輩!」
「……呼びにくくない?」



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