恋愛小説(2)-14
「それを、葵ちゃんは今何故、僕に伝えようと思ったのだろう?」
「ひーちゃんがの恋が、叶わない恋だってわかったからです」
「叶う恋なら、そうはしなかったってこと?」
「はい。例えばそのベクトルが千明先輩に向かっているなら、私は心の中にひっそりと隠しておくつもりでした」
「でも違った」
「……はい。ひーちゃんは困るかも知れませんが、我慢ができませんでした」
そこで一つ、葵ちゃんは笑ってみせた。いつもどおりの、素敵な笑顔だった。
「それを聞いて、僕はどうするべきなのだろう?」
「それは、ひーちゃんが決めることだと思います」
「そうだね、そのとおりだ。ごめん」
「私は」
「ん?」
「私は、ひーちゃんと付き合いたいです。私の事を、好きになって欲しいです」
「……そうか」
それだけいうと葵ちゃんは黙った。僕はなにかを言葉にしようと試みたのだけれど、それは喉まで上がった所で消えてしまった。なにを言おうかも、もう思い出せなかった。
雨の音だけが響いている。もしかしたら僕が言おうとした言葉は、晴れる頃に思い出せるのかもしれない
続く。