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God's will
【その他 官能小説】

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A man who doesn't have one's dominant arm-2

「そう。だから、僕としては君の力になりたいと思っているんだよ。君には自覚はないと思うけれど、僕は君に恩を感じているんだ」と、そんなことを言われても僕にはピンとこない。僕は宮下勉君についてはほとんど何も知らないも同然だった。彼がルカの姉の恋人で、ルカを妹のように可愛がり、恋人と友好的な関係を築いていたことくらいしか知らない。そんな彼に恩を感じてもらう理由など、どこにも見当たらない。

「ルカが会いに来たの」と由佳さんが唐突に口を開いた。「四日前の夜に、アタシのところに連絡もなくルカがやって来たの。どこから来たのかは分からない。気がついたら夜、本を読んでいたアタシの目の前に立ってた。そして色々な事をアタシに話した。今まであったこと、木村修のこと、それから、紫音君、君のことも」

 四日前といえば、丁度あの雨の晩だと思い当たる。でも、ルカは僕と一緒に隣の部屋の寝室のベッドの上にいた。僕は視線を寝室へと続くしめられたふすまに向ける。

「四日前、ルカは僕と一緒にいました。そして、色々あってルカは死にました。ルカが死んだことは、お二人はご存知ですか?」二人は頷く。「そのルカが、由佳さんに会いに行けるはずはないと思うのですが」と僕は当然の疑問を口にする。

「ある人が死に瀕したとき、家族や、あるいは愛しい誰かの前に姿を見せるという不可思議な話は世界各国にあるの。アタシは多分そういうことだと思う。ルカはアタシに言った。<私はお姉ちゃんの目の前にいるけど、本当は全然別の場所にいるの。全然別のその場所は、暗くて、雨が降ってるんだ。私はそこで首を絞められていて、多分、もうすぐ死ぬんだと思う>って。アタシは最初、妹があたしに助けを求めに来たんだと思った。でも、それは違っていたの。<恨まないで>って、紫音君の事を言ってた。その頃ルカの身の回りの起こっていたことを色々アタシに話した。そして話し終わると、アタシの目の前で、ゆっくりとルカが消えていったの。<仕方なかったんだ。お姉ちゃんごめんね>って、最後に言い残してルカはゆっくりと消えていった。体中の色素がゆっくり透明になっていくみたいにね。そして最初からそこに存在していなかったみたいに、ルカは完全に消えたの。アタシはルカが立っていた辺りまで行って手で触ってみようとするけど、当たり前のようにあたしの手は宙を空振りするだけ」

「信じられない」と僕は呟く。溜息にも似た小さな呟き。

「無理もない」宮下勉君は肩を落としてうなだれる僕に同情するように言った。

「一体なにがどうなっているのかよく分からないんです。宮下修さんはともかく、由佳さんは僕が高校生だった頃に死んだとルカから聞いています。だったら、それは嘘だったのでしょうか? だって、こうして事実、目の前に由佳さんと名乗る人物がいるのですから。こうなってはもう、ルカが嘘をついていたか、それともあなた達が宮下勉さんの名前と、ルカの姉を騙る全然別の何者かということになります」

「ルカは嘘をついていないし、私たちも嘘はついていない」由佳さんは説得するように言う。僕は半ばこの二人を信用していなかったが、確かに嘘はついていないように見受けられる。でも、人は人をだますときは巧妙に罠を張り巡らせる。そして、それらを見極めるような正確な眼を僕は持ち合わせているわけでもない。それならば彼らの狙いはなんだろう。巧妙に何かを僕に吹き込もうとしているのかもしれない。新手の営業というわけではないのだろうけれど。あるいは、宗教勧誘とか、その類の話だろうか。


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