Island Fiction第6話-1
わたしの手にはバイブレーターがあった。
蛍光グリーンのボディーは凶暴なペニスそのものだった。
わたしは公園にいる。
空には月が浮かび、街灯と街明りがわたしをうっすらと照らしている。
地方都市とはいえ、人口百万を超える大都市だ。
近くの通りには車が引っ切り無しに行き交い、人であふれている。
街の喧騒がわたしを視姦しているかのようだ。
人通りの多い公園とはいえ、夜に若い女が一人でいるのは危険だ。
そのことは十分承知している。
なのに、恐怖心はなかった。
わたしはクルミに教えられたとおりにトウゴウと連絡を取った。
トウゴウはスミレ姉様と繋がる男で、トウゴウがスミレ姉様の居場所を知っているということだった。
なぜ回りくどくしなければならないのかは不明だ。
だからといって、従わないわけにはいかない。
もしかしたら、姉様も身の危険を感じているのかもしれないと解釈した。
SM愛好家たちが集うサイトのチャットルームで「カズキのママ」というハンドルネームを使ってわたしは待ち、トウゴウはすぐに食いついてきた。
わたしたちは会うことにした。
ヨレヨレのネルシャツにMA-1とナイキのスニーカーというトウゴウの出立ちに、わたしは幻滅し、どん引きした。
その上、トウゴウはドM野郎だった。
言うことを聞かなければ姉様の居場所を教えないと言われたので、わたしはトウゴウとラブホテルへ入ったけれど、トウゴウが鼻息を荒くしながらわたしの足を舐め始めると、わたしは鳥肌が立って、無理矢理着させられた女王様風のボンテージ衣装が肌に張り付いて着心地が悪いし、トウゴウの有り余る腹の脂肪と、どこからが陰毛なのか分からないヘソの毛が醜くて、汚らしくて、吐き気さえ催して、あまりにむかついたので、ピンヒールの踵でトウゴウの額へ力一杯けりを入れたら、トウゴウはもんどり打ちながら射精した。
そしてわたしは堪えきれなくなってホテルを出た。
その先が思い出せない。
この時点でわたしはどこかおかしくなっていた。
わたしはわたしでなくなっていた。
ふと気がついたらバイブを握りしめていた。
そしてレオタードを着ていた。
白い生地がやたらと薄く、肌まで透けてしまっていた。
乳首や下半身の毛やワレ目のくすんだ色さえも丸見えだった。
どうしてこんなものを着ているのか分からない。
いつから着ているのかも思い出せない。
バイブにしたって、こんなものを買った覚えはないし、どこで手に入れたかも定かではない。
すれ違う人たちから奇異な目で見られるのは、なぜだか気にならなかった。
それどころか、突き出た胸の突起が誇らしくて、テンションが上がった。
体が火照って、自然と手が乳房へ伸びていた。
レオタードの上から乳首をコリコリと摘んだ。
ナイロンの生地の上から股間の裂け目に触れただけで体が大きくしなった。