Crimson in the Darkness -邂逅-(side;lee)-5
『お前の存在は我々にとってタブーなのだ。その身と魂、食らってやる』
黒犬が身体を低くし、身構えた。噛みつかれる瞬間に咄嗟に上へ抜ける穴をよじ登って、遊具の頂上に出た。
そこから直ぐに飛び下りて、またひたすら走った。真っ暗で誰もいない道をただ全力で走った。
そして、直ぐ後ろに聞こえる爪が地面を削る音に心臓が大きく跳ねた。
追い付かれたら、殺される。
死ぬって何か解らない。でも、今感じるのはとてつもない恐怖。怖くて怖くて堪らない。
だから、走り続けた。後ろを振り返らずに。涙で視界がぼやけていたけど走るしか出来なかった。
そしたら、何かとぶつかって後ろに吹っ飛んだ。
「…………おい」
低い声。
尻餅をついたまま、顔を上げられなくてギュッと目を瞑った。
殺される。
そう思って身体を強張らせた。だけど、いつまで経っても痛みはなくて、恐る恐る顔を上げたら、黒い服を着た人が目の前にしゃがみこんでいた。