僕が君にできること-2
「マサル!!」
急に名前を呼ばれ、振り向くとあいつがいた。
何も持ってないのでどうやら水汲みの途中では無さそうだ。じゃあ、何の用事でわざわざここに?
「何してるの?!外にいたら悪魔に襲われちゃうよ!!」
青い色の大きな切れ長の瞳で、金色の長い髪が風になびいている。
どっちも俺とは違う色だ。
俺の両親は日本生まれなんだが、こいつの両親は海の向こうで生まれたらしい。
同じ人間なのに生まれる場所によって体の特徴が違う、とガキの頃に教わった。
言葉も違うらしいんだけど、こいつは俺と同じ言葉を喋る。
こいつに限らず地下で暮らす人間はほぼみんなそうだけど。
「何しに来たんだ、サラ」
「何しにって・・・地下に居ないから探してたんだよ!!」
「そんな怒鳴らなくても聞こえるよ。別に心配ないって、この時間じゃまだ悪魔は出ないから」
「早く帰ろうよ。皆マサルのこと心配してるから」
・・・そんなの嘘だ。
俺だったら誰とも関わろうとしない奴なんか相手にしない。
死にたがってる奴なんかほっとけばいいんだよ。
「ちょっと散歩ついでに運試し。悪魔に食われないかどうか」
「そんな下らない遊びなんかしなくていいの!さあ、帰ろう」
こいつは・・・
サラはなんで、俺なんかを構うんだろう。
他にも俺と同い年の奴は沢山いるし、どいつもカッコいいし、何より優しい。
何で寄りにもよって俺みたいな疫病神の世話を焼いたりするんだろう。
「マサルが無事で良かった」
「そ・・・そうか」
やめろ。笑顔なんか見せるな。
やめるんだ、やめてくれ。
皆と同じだ、俺に優しくしてくれた人達と。
俺には誰も触れちゃいけないんだ。
あの時だってそうだった。
両親は悪魔から逃げようとして転んだ俺を庇って・・・
弟も、妹も、うっかり外に出て悪魔に襲われた俺を守ろうとして・・・
仲の良かった友達も、かなう筈が無いのに悪魔に飛び付いて、時間を稼いでくれた。
なんでだよ。
死んでほしくない人がどうして次々に居なくなるんだ。
どうして俺は生かされてしまうんだ。
なあ、神様。
一体俺が何をしたっていうんだよ?
「あっ、顔赤くなってる。もしかして私のこと好き?」
「阿呆、馬鹿、なな何を言いだすんだ。お前女のくせによく恥ずかしくないな」
「マサル言われ慣れてなさそうだもんね。えへっ」
好きになっちゃいけない。大事な人だなんて思ったらいけない。
壊される、すべて。