EP.FINAL お兄ちゃんと超ラブラブ-1
「ひーかり!セックスしようぜ!」
「せいっ!!」
「ぐぼぁぁぁ・・・がふっ、わ、脇腹は反則だぞ・・・おぇぇぇぇ」
朝一番で夜這い、もとい朝這いを仕掛けようとした典明を沈めるひかり。
ドアの隣で待ち構えながら、入ってきた瞬間を狙い的確に脇腹を打ち抜いた。
「なあひかり、うちに来いよ。筆を握らせとくだけじゃ勿体ないぜ、そのパンチ」
「朝っぱらから何してんのよこの変態!」
「帰ってからなんて我慢できん。ここで今すぐギブミーセックスだ!セックスぅ!」
「しねっ!!」
懲りずに襲おうとする典明をもう一度躱し、今打ち抜いた脇腹に再びフックを突き刺す。
「ぐふっ、かはっ!ひ、ひかり、力だけでなくフットワークも見事だ、是非我がボクシング部に・・・」
「慣れてますから」
物心付いた時からずっと兄のスキンシップを受け続けるうちに、ひかりは自然に反射神経が鋭くなっていた。
やがてハラスメントにランクアップする頃には、後ろを向いていても気配を感知できる様になった。
「いいじゃないか、お前もやっとその気になったんだし。だから・・・」
「・・・・・・朝からしたい、なんて言ってないけど」
「頼むよひかり、もう今すぐ暴発しそうなんだ」
変態の兄は両方の脇腹を痛めてもまだ諦めていない。
(昨日帰ってからって約束したのに、それも私の方から・・・まったく、その事しか頭に無いのかな?)
薄々分かってはいたものの、やはり頭の中は性的な考えしかない兄に、ひかりは呆れていた。
「それしか言わないお兄ちゃん、あんまり好きじゃない・・・」
それを聞いた途端、典明の顔が引き締まった。
擬音で表すなら漫画でよくある¨キリッ¨である。
「ならちゃんと約束を守るお兄ちゃんは好きなんだな。よかろう、俺は完璧な兄だというのを分からせてやる」
「言われるまでしたがってたくせに・・・」
「では、行って来る。定時で帰るからな。禊ぎは済ませておきなさい」
取り敢えず一時的に自分から離せた事に安心し、ひかりは兄を送り出した。
姿が見えなくなってから、重い足取りで家に戻る。
「・・・綺麗な体でいられるのもあと少し、かぁ・・・」
今までかなり危ういところまで踏み込まれているので、綺麗かどうかは微妙だった。
だが、まだ一応¨かんなぎ¨ではある。
「なんでしたいなんて言っちゃったのかな〜・・・はあ、胸が重い・・・」
重い足を引き摺る様にして何とか階段を上り、自分の部屋に戻った。
自分の気持ちを整理しようと、少し前までいたベッドにもう一度体を預ける。
(まだ1ヶ月前までは大っっ嫌いだった)