Crimson in the Darkness -決意-V-1
「違う……違う、ちがう……」
青色の大きな瞳を見開いたリーはオレの言葉を否定した。
目覚めて間もないリーを突き放すのは、心苦しくてたまらない。でも、今のまま、のらりくらりとやっていけるほど現状は甘くないのが事実。
だから、止める訳にはいかない。
「どの道、結果は同じだ。それに、一つ教えてやる」
努めて冷静に、極力冷たく言い捨てるように準備しておいた言葉を紡ぐ。
「オレは悪魔が嫌いだ。皆殺しにしてやりたいくらい憎い。その血を引くお前も…………同じだ」
徐々に色を失っていく愛らしい顔。小刻みに震えだした足元と肩が余りにも痛々しくて、直視するのが辛い。突き放してでも、リーを守ると決めたのはオレだ。傷付けても、憎まれても構わない。そう決めたんだ。だから、これはオレの咎だから、目を逸らす訳にはいかない。
「荷物は総本部宛に送っておいてやる。お前、もうオレの前に現れるな」
最後の言葉。それを伝えると、端を切ったようにリーの瞳からボロボロと雫が零れ落ちる。案の定、泣かせた。純粋に傷付いて流れる涙は思ってたよりも胸を締め付ける。
これで終わりなんだ。そう思って、踵を返して礼拝堂を後にした。背にした扉から啜り泣くあいつの声が聞こえた。耳に焼き付きそうで、そこから逃げるように離れると、教会の敷地外にリアナの姿があった。