Crimson in the Darkness -決意-U-2
「……はあ……」
爺さんが礼拝堂から立ち去ると、彼女は怪訝な顔になった。
「あの人は旧教皇派ですから……」
苦笑とともに呆れ口調で言うシエルにオレも相槌を打った。
「こんな島国に来てまで派閥争いってのもご苦労なこったな」
リアナは少し驚いたような顔になると、小さく口を開いた。
「……こんな所にまで噂が広まってるとは……思いませんでした」
そうか? 有名なハナシだぞ。今の総本部には旧教皇派の人間は一人もいない。新派である“女教皇(エイシェル)派”が実権を握ってから凡そ2年。その間、大幅な人事があり、旧教皇派の徹底的な排除がなされた。
あの爺さんだって昔は総本部に居て、旧教皇派ってだけでこんなトコにまで飛ばされたってハナシだ。
「旧教皇派を一掃すれば、イヤでも噂は立つ。ましてや反発すること自体が背信行為だって言っちまえば、教会が国そのものであるあの国じゃ誰もが認めざるを得ない。だからと言って“受け入れ”られたとは言えないだろ」
強行姿勢はマイナスイメージだ。嫌われかねない。
「そうですね…。貴方がたもそう、思いますか…?」
嘲笑を滲ませた僅かに硬い声でリアナはオレとシエルを交互に見据えた。何かを押し隠した様な新緑の隻眼で。
だけど、それを尋ねる相手が間違っている。