歩く道-エピローグ-2
「…………『帰ってきなさい』ってどういう意味?」
正面に座っているカイキが問い掛ける。
「ん? あ、えとね、2年前まであたしもカイキくんと同じでここのアパートに住んでたんだ。1年だけだけどね」
素直に答えると明希はカイキににっこり笑ってみせた。
「……てことは3年前から……?」
今18なら、15の時からここにいるのか。結構長いのではないかと思う。
「うん。あたしは湯来さんに拾われたの。大分迷惑掛けたんだよねー。それでも見捨てないでくれた。いつも真正面からぶつかってくれるから」
何故だろうか。そう話す明希の表情は暗いものではなく、清々している気がした。それでも、何かを問うには躊躇してしまうところだ。
「……明希は……」
「家出」
「…………」
聞きにくそうにしていたカイキに対し、明希はあっけらかんと答えた。
「理由はね、あたしの居場所がなかったから。愛人の子供は正妻サンには憎らしいだけでしょ?」
明希の話に慎悟の言葉を思い出す。
『母親は違うけどね』
確かにそう言っていたのだ。カイキがそんなことを思い出していると、明希がまた口を開いた。