EP.5 お兄ちゃんは超デカブツ-1
(何て言おうかな・・・)
昨日は寝付けなかったが、いつもより早く目が覚めた。
ひかりは意識は醒めても、体に残った熱はまだ抜けていない様な気がしていた。
(・・・なんで私、あんな事を・・・)
なぜ典明の性器に、自らの花弁を擦り付けたのだろうか?
いくら人間離れした苦悶の表情をした兄を目の当たりにしたとはいえ・・・
結果的に典明はそれで多量に発汗し、体調が快復して無事に眠りに落ちた。
夜になる頃には熱も下がったので、今日は部活に行く事が出来るだろう。
あと数分もすれば、そのまま1階まで落ちる様な勢いで、部屋から飛び出してくるに違いない。
もう時間は無いのだ。顔を合わせたくなくても、その思いは叶わないだろう。
その時、ドアが開き、典明の体がひかりの目の前に落ちてきた。
「刮目せよ、この肉体美を!」
立ち上がるやいなや、汗で濡れた胸板をヒクヒクと脈動させる典明。
只でさえこの異常な猛暑で参っているのに、朝も早くからこんなえげつない物を見せつけられては、部屋の温度が無駄に上がってしまう。
「はいはい、治ったのが嬉しいのは分かったから、早く着替えなよ」
だがひかりは典明の体など見ていなかった。
テレビを見ながらジャムを多めに塗ったトーストを噛っている。
「つれないな。看病のお礼に見せてやっているというのに」
「頼んでないっつうの。そんなきったないもの誰が見たいのよ」
「き、き、汚い?!馬鹿な、綺麗な乳首だと後輩に誉められてるんだぞ!」
「もういいから行けば?うるさくて聞こえないんだけど」
ひかりはテレビの音量を上げながら面倒臭そうに答えた。
ろくに自分を見ようとしない妹の態度に失望し、典明はそのまま水筒を鞄に入れて出かける準備を始める。
「だから着てけっつーの!!この変態!」
そして、着替えないまま家を出ようとして、ひかりに丸めた制服を投げ付けられた。
「お兄ちゃんに着せてーん。僕、子供だから一人でお着替え出来ないのー」
するとひかりが包丁を握り締めて走ってきたので、典明は慌てて胸元を隠す。
「待て、刃物はいかんぞ。いくら鍛えようがそれでぶすり、だけはどうにもならんからな」
「さっさと行かないと・・・突くよ。知ってる?殺傷能力は切るより突いた方がね・・・」
「まあ待て、是非お礼をさせてくれ。正直な話・・・昨日はお前が傍に居てくれなかったら、どうなってたか分からなかった」
感謝されるというのは悪い気はしなかったが、相手が乳首丸出しの場合は、この限りでは無い。
典明は何をしてほしいか考えといてくれ、と言い残し家を飛び出したのだった。