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とある街のとあるモノガタリ
【純愛 恋愛小説】

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来訪-1

 ノックもなく社長室に入ってきた眼鏡を掛けた物腰の柔らかそうな優男が言った。カイキと明希を捕らえていた黒ずくめ達が新たに現れた優男に襲いかかる。が、優男の傍にいた黒服達にあっさりと後ろ手に捻り上げられ床に伏せられる。



「アポもなく、突然の訪問申し訳ございません。今藤社長」



 先頭の優男は低姿勢で謝罪を口にする。



 そんなやり取りの中、カイキは明希の傍に駆け寄り、彼女の身体を抱え込んだ。そして、目隠しと手の自由を奪っていた紐を丁寧に外す。



「明希! 明希!」



 彼女を支えるように床に片膝を突き、名前を何度も呼ぶが目を閉じたまま、一向に返事がない。



「高城(タカギ)。アキを診てやれ」

「はい」



 男は近くに居た腹心に命じて、明希のことを任せることにした。



 高城と呼ばれた男は足早に明希の元に駆け寄ると、額に触れようとする。が、それをカイキが阻止する。不信感が否めず、触れようとすることに嫌悪感を露にした。



「大丈夫。お嬢……明希さんには危害を加えるつもりはありません。彼女は我々の大事な家族ですから」

「明希の……家族……」

「はい。よろしいですか?」

「…………」



 低姿勢を崩さない高城にカイキは掴んでいた彼の腕を大人しく手を離した。明希の顔色や呼吸の荒らさを確認すると、高城の顔色が曇った。



「若! アルマだ。病院に連れていった方が良い」



 高城がそう声を荒げると、男は『直ぐ連れて行け』と告げる。その傍でカイキは『アルマ』と言う言葉に動揺した。




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