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とある街のとあるモノガタリ
【純愛 恋愛小説】

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来訪-2

「…………アルマ……何で……」



 何でそんなものを明希に……



「私は今から明希さんを病院に連れて行きますが、君は一緒に来るかい?」

「…………、いえ」

「また後で来ると良いよ」



 高城はカイキの腕から明希を抱き上げると、一人の黒服を連れて社長室を後にした。明希の温もりが残る手をギュッと握り締め、立ち上がると、父親に詰め寄る。



「父さんっ! 何で明希に『アルマ』を!? 麻薬(ドラッグ)なんて使うなよ!!」



 父親の前に立つとあり得ないと言った表情で訴える。そんな彼の後ろから先程やってきた優男が溜め息と共に口を開いた。



「アキに麻薬とは……皮肉なことをしてくださったようで。あの娘を偵察に使った我々が言うのも筋違いでしょうけど」



 目を細め、カイキの父を見つめるその眼には優しさなど欠片も見せず、冷えきったもので、カイキの父は背筋に悪寒を走らせた。



「お前たちが探らせていたのか……っ」





「さて、本題に入りましょうか。我々も今回の件は見逃せないのでね。自己紹介が遅くなりましたが、僕は金城商会社長、北山慎悟(キタヤマシンゴ)と申します」



 優男は軽く会釈すると、胸ポケットから名刺を一枚取り出し、デスクに置いた。



「まさか……北山組……」



 『まさか』来るとは思わなかったのだろう。カイキの父親は顔を青ざめさせ、肩を震わせる。



「はい。父は北山組組長、北山幸信(キタヤマコウシン)です」

「!!」



 この地域一帯を締める反社会巨大組織『北山組』。昔に比べ、大人しくなりはしたものの、未だに権力はあり、その気になれば警察すらも捩じ伏せるだけの『力』を有しているのだ。

 そして、目の前の軟弱そうな男はその組の跡取りだと告げた。




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