来訪-4
「お前の知るところではない。我々は家族(仲間)を傷つけられたら黙ってはいない。その気になれば、こんな会社など簡単に潰せる。どうする? 大人しく手を引くか? それとも証拠を全て警察に突き出してやろうか?」
「そんなことをすれば、お前たちも……っ」
「全ての責は村西にある。組に従わない者は不要だ。切り捨てる。どちらにせよ、アキを傷付けたんだ。アレには命をもって償わせる」
「ぐっ」
眼鏡越しでも解る。この男、慎悟は本気だ。あの小娘一人で、切り捨てると。企業一つを潰すと言ったのだ。
「考えることでもないだろう?」
「……………解った。手を引く」
奥歯を噛み締め、大人しく頷いた。
「よろしい。では、その契約の証しに貴方の息子を我々に預けてもらおう。契約が反故になれば、……解るな?」
慎悟はカイキの父親からカイキ自身へと視線を移し、小さく笑う。だが、カイキは動じることなく首を縦に振った。
「馬鹿なっ! 灰稀は駄目だ! 唯一の跡取りだぞ!」
「アキを嬲ったのはどなたですか? 彼女を犯す寸前までいたぶったんだ。同じだろう」
「奪ってはいない!」
「だから、殺しはしない。我々の監視下に居てもらうだけだ」
同じ。同じだけのものを味わえと告げた慎悟はカイキを手招く。が、カイキの肩を掴み引き止める父親へ振り向く。そこにある父親の顔は怒りで赤く染まっていた。
「ふざけるな! 灰稀とあの小娘を一緒にするな! どんな男とでも寝るような不良とっ」
ガッ
鈍い音がカイキの耳に届いた。震える拳を引き戻し、殴られた弾みで床に尻餅を突いた父親を見下ろした。
「かっ、かい、き」
「明希は違う! それは俺だ! 家を出てからそうやって過ごしてきたのは俺なんだよ!」
大声でそう叫ぶとカイキは肩で大きく息を吐く。
自分自身も明希にそう言って、押し倒した。その時の明希の目は怯えていなかったけど、声は微かに震えていたんだ。だから、明希はそんな人間じゃない。
そう言う意味で一緒にして欲しくない。そう思ったのだ。