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とある街のとあるモノガタリ
【純愛 恋愛小説】

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来訪-3

「金城商会は北山組の傘下。僕がここに来た理由はお分かりでしょうか?」

「む、村西の許可は得ている!」



 土地を取り仕切る者には許しを得た。そう言いたいのだろう。が、慎悟は肩を竦め、一笑してみせた。



「アキのいる西区を取り仕切っていた白河組若頭・村西誠也(ムラニシセイヤ)ですか。彼は今朝から拘束中です。以前から組の取り決めを守らず、資金の使い込み、独断での麻薬の売買等、色々やってくれていたのでね」



 カイキの父親は更に顔を青ざめさせ、目元を震わせている。



「あの男はアキがアルマの販売ルートを追っていたのを何処からか嗅ぎ付け、アキをアルマの製造を担っているこの会社に売ったのでしょう? 村西はアキが僕の愛人か何かだと思っていたみたいで、自分の組で処分するには荷が重いと考えたのでしょうね。あれはずる賢い男だ」

「――っ」



 押し付けられた形になっていたのか。村西は最初からすべて解っていたのだと、慎悟は暗に言う。既に利害関係は崩れていたと言うこと。怒りとこれからの恐怖とで手が震え出す。北山組の幹部を前にタダで済むはずがない。たかが小娘一人を連れ戻しに来たのだから。

 少しの間を置いて、慎悟が口を開いた。先程までとは比べようもない剣呑で、ドスの効いた声で。



「さて、取引しましょう」

「取り引き、だと!?」

「我々はアルマの製造元がここで、貴方の命令でやっていることは解ってる。その情報と引き換えに、我々のシマでの売買を止めて頂きたい。そして、今後一切シマへの介入及び立ち入ることは認めない」



 思った以上に安易な提案出はないかと、カイキの父親は不信に感じる。



「…何?」

「北山組は麻薬の売買、使用は一切認めていない。シマではそれを許していない。従わなければ、制裁もある」

「馬鹿なっ 何で資金をっ」



 これだけ巨大な組織を維持するのに何で資金を得ていると言うのか。そんな疑問もあり口にするが、カイキの父親は鋭く睨まれる。




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