Island Fiction第5話-8
「あっ、んぁぁあ――! アソコがジンジンするぅぅぅ――っ! 感じるぅぅ、ああ、感じすぎるぅぅぅ――っ!」
傷口の痛みはすぐに消えることがないのと同じように、快感がクルミを襲い続けた。
黙って見守っているだけで勝手に上り詰めていった。
「あっ、あっ、ぐっ、ぐっ、ぐぁ、ああぁぁ――っ!」
クルミは髪を振り乱し、絶頂に達した。
その絶叫は悦楽に耽る女のものでは決してなかった。
奈落の底から聞こえる死者の叫びのようだった。
お仕置きとは、いったい如何なる罪に対しての罰なのか。
いや、果たしてこれはお仕置きなのだろうか。
クルミに当てられたカップルの客が濃厚な口づけを交わしていた。
胸の谷間に顔をうずめる男もいた。
わたしは酔った。
頭がクラクラして、平衡感覚を失った。
残虐と寵愛との境があやふやになって、濃い霧の中で彷徨うがごとく視界がぼやけていった。
残虐シーンを目の当たりにしているはずなのに、体は汗ばみ、乳首が締め付けられるように硬くなった。
溢れた愛液が太ももを伝うのを感じた。
「これで終わりだなんて思っちゃいけないよ」
白衣の男はこれまでとは打って変わって、大がかりな道具を抱え上げた。
なんと、チェーンソーだった。
エンジンの爆音がわたしから思考を奪おうと耳をつんざいた。
これをどう使うのか想像できなかった。
いいや、違う。
チェーンソーの使い方は一つしかない。
人間業とは思えない行為を認めたくなかったのだ。
人にこのような所業が出来るはずがないと信じたかったのだ。
どんな人間にも慈悲の心は残っているはずなのだ。
懲罰の範疇を超えている。
これは公開処刑だ。
「あっ、あっ、あっ、あ、あ、あああぁぁぁ……」
クルミの表情が恐怖で凍り付く。
「やめてっ!」
わたしは声にしようとして、客のペニスで口をふさがれた。
高速で回転するチェーンがクルミの肩口にあてがわれた。
刃先が皮膚を切り裂き、肉や脂肪を削り、骨へ吸い込まれていく。
機械の前では、人の体はあまりにも脆く、柔だった。
「ぐぎゃぁぁぁ――っ! いやぁぁ――! やめてぇぇぇ――っ!!」
クルミの叫び声は、チェーンソーの咆哮にかき消された。
血や肉片が床や天井へ飛び散り、チェーンソーを操作する男の白衣が鮮血で赤く染まった。
右腕は体から切り離された。