Island Fiction第5話-5
「ふむ、透き通るようなピンク色だ。ラビアの形も整っている。五年前と変わってないな。むしろ、大人の色気が出てきた」
そう言って、犬のようにクンクンと匂いを嗅いだ。
テーブルに並んだ料理の香りを楽しむような、もしくは、ワインのテイスティングのようなつもりだったのかもしれない。
ササキは納得したようにうなずく。
そしてデスクの引き出しから、丸いプラスチックケースを取り出した。
中には化粧品のような薬のような薄茶色のペースト状のものが詰まっていた。
男はそれを中指ですくい取り、わたしの秘裂に満遍なく塗りつけた。
重なり合う襞を指が滑り、肉芽を撫で回したかと思うと膣口の周りを擦った。
「やめて……」
薬が塗り終わる頃には、薬が愛液に溶けて何を塗っているのか分からなくなっていた。
「はあぁ……」
詰めていた息が漏れた。
ササキがボディーガードの大男に目配せした。
すると、出し抜けに大男が武井を羽交い締めにする。
「な、何をするんだ!」
本能的に危険を察知したのだろう。
武井は激しく暴れた。
「ご苦労だったね」
「ちょっと待ってくれ! ここのことは誰にも言わない! 約束する! 俺は金が欲しかっただけだ! 小遣い程度の金があれば十分なんだ!」
「くどいな。同じことを言わせないで欲しい」
「待て! 俺が死んだら警察へ行くように仲間に頼んであるんだぞ!」
「構わんさ」
「俺がどうやってここの情報を仕入れたのか分からなくなるぞ!」
「すでに処理済みだ」
武井の打つ手はなくなった。
「畜生!」
必死で暴れ、大男の腕にかみついた。
大男はカーッと頭に血が上って、武井をぶん殴った。
脳挫傷で死んでもおかしくないほどの剛力だった。
武井は床にたたきつけられてゴム毬のように弾み、あっという間に気を失った。
大男は武井をヒョイッと肩へ担いで連れて行った。
この後、やはり彼はバラバラにされ、生ゴミと一緒に捨てられるのだろうか。
わたしはスーッと胸が軽くなっても咎められる謂われがないほどの仕打ちを受けてきたけれども、なぜだか武井に同情した。
顔に唾をかけてやりたかったとか、一発殴っておけばよかったとか、自分で手を下せなかったことが悔しいとか、そういった未練がましい感情はなかった。