EP.4 お兄ちゃんは超ボロボロ-8
「・・・お兄ちゃん」
デレーンと鼻の下が伸びていく典明。
そこを滑走路にして、何とも間の抜けた鼻息が落ちていった。
「えへへ、お兄ちゃん」
「ひかり!」
「お兄、ちゃん」
「ひかり!ひかりっ!」
嫌っていた呼び方を連呼して、一体ひかりはどうしてしまったのだろう。
入れ替わる様に今度はひかりの意識が過去に飛んでしまったのだろうか?
「お兄ちゃん!」
「ひかり、分かった。嬉しいがひとまず満足した」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
「だから分かったって。そんなに何度も言わなくてもちゃんと聞こえてるから」
典明と違い、ひかりは正常だった。
小さく呼び掛けたのを聞かれてしまい、今更言ってないなどというのも格好悪いので、自棄気味に連呼している。
何より、ひかりは自分の気持ちに気付いて吹っ切れたのだった。
普段本人の前でどんなに拒絶していようとも、典明に異変が起きたら自分を顧みず助けようとした
それが答え、つまり包みも隠しも出来ない本当の気持ちなんだと、ようやく受け入れる事が出来たのだった。
兄の為ならショーツも脱ぎ捨てられる自分を誇れる、そんな妹になりたいと誓うひかり。
「くう、あとは体調が万全ならお前の鋼のヴァージンをプラスチックに出来たものを、げほっごほっ」
「まだ寝てなくちゃ駄目だよ。私が傍についてるから、だから安心して。お兄ちゃん」
「分かった、じゃ大人しく寝るとするよ」
その時、ひかりの頭に電流が走った−
「隙あり!!」
「おっと」
寝るふりをして押し倒そうとした典明を寸前で躱し、脇腹に強烈なフックを・・・
入れる寸前で拳を止めていた。
1人しかいない兄を傷つけてはいけないのだ。
「ふっ、いけると思ったが・・・さすがは鋼のヴァージン、簡単にはさせてくれないか」
「風邪治してからね。はい、あーん」
ちょっとだけ冷めてしまったお粥をれんげで掬い、典明に食べさせた。
今度はもうフーフーしなくてもいいかな、と思うと少しだけ寂しかった。
「約束だぞ。まだ2人きりのうちに、しちゃおう」
「・・・・・・考えとく」
典明に負けないくらい顔が赤くなっていたが、ひかりは全く気付いていなかった。
(見付けた。私の大事な・・・もの・・・)
ようやく探していたものが見付かったから、気付かなかったのは当たり前かもしれない−
〜〜続く〜〜